【第40話】トリプルネガティブ乳がん、治療後は経過観察へ|「何もしなくて大丈夫?」と不安だった私の10年

乳がん体験記

※この記事は、私が2013年にトリプルネガティブ乳がんと診断され、2014年にかけて治療を受け、その後約10年間、経過観察を続けた自身の体験をもとに書いています。

※乳がんの治療内容や治療後の経過観察は、乳がんのタイプや進行度、受けた治療、その後の経過などによって異なります。また、トリプルネガティブ乳がんの治療も、私が治療を受けた当時から進歩しています。

※この記事で紹介している診察や検査、生活上の工夫は、あくまで私の場合です。治療後の経過や気になる症状については、主治医や医療者に相談してください。

治療が終わったのに、私は安心できませんでした

2013年、私はトリプルネガティブ乳がんと診断されました。

術前抗がん剤、乳房温存手術、そして放射線治療。

長く続いた治療をすべて終えたとき、私はようやく大きな山を越えたような気持ちになりました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「これで治療は終わりなんだ」

本当なら、もっと喜べると思っていました。

けれど、主治医から「これからは経過をみていきましょう」と伝えられたとき、私の中に浮かんだのは、安心よりも戸惑いでした。

もう治療をしなくて、本当に大丈夫なの?

トリプルネガティブ乳がんだった私の場合、当時、抗がん剤、手術、放射線治療を終えたあとは、薬を飲み続けるという治療はありませんでした。

治療中は、副作用がつらくて「早く治療を終えたい」と何度も思っていたはずなのに。

いざ治療がなくなると、今度は何もしていないことが怖くなったのです。

治療終了後、主治医から経過観察になると説明され、治療をしなくなることに戸惑うきゃんばぁばを描いた4コマ漫画

治療が終わった安心よりも、「何もしなくて本当に大丈夫?」という不安が残りました。

治療が終わったら、すべて元通りになる。

病気のことを考えずに暮らせるようになる。

私はどこかで、そう思っていたのかもしれません。

でも実際には、ここから私の約10年間の経過観察が始まりました。

「まずは3年」節目を数えながら過ごした日々

治療を終えた頃、私は主治医から、トリプルネガティブ乳がんは治療後の比較的早い時期の再発に注意して経過をみていく必要がある、と説明を受けました。

その言葉は、私の心に強く残りました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「まずは3年」

私はそんなふうに、一つの節目を意識するようになりました。

検査の日が近づくたびに、「今回も大丈夫だろうか」と不安になる。

無事に検査が終わればホッとする。

そして、次の検査が近づくと、また不安になる。

そんなことを、何度も繰り返していました。

経過観察の検査日が近づき、カレンダーを見ながら「今回も大丈夫かな」と不安を感じる女性

検査が近づくたびに不安になり、無事に終わるとホッとする。その繰り返しの中で、まずは3年を目標に過ごしていました。

カレンダーの日付を数えるようにして、私は最初の数年を過ごしていたように思います。

「もっと検査をしてほしい」と伝えた私が受けていた経過観察

再発が怖かった私は、あるとき主治医に聞きました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「もっと頻繁に検査をしてもらうことはできませんか?」

検査をたくさん受ければ、もし何かあっても早く見つけてもらえる。

そうすれば安心できる。

当時の私は、そんなふうに考えていました。

再発への不安から、主治医に検査の回数を増やせないか相談する女性

検査を増やせば安心できると思い、主治医に相談したこともありました。

けれど主治医からは、症状がない状態で検査を増やしたからといって、必ずしもその後の経過が良くなるとは限らないことを説明されました。

正直なところ、そのときはすぐに納得できたわけではありません。

それでも、決められた通院を続けていくことになりました。

私の場合の経過観察

  • 最初の3年間は、年に3回ほど診察
  • その後は、年に1回の経過観察
  • 受けていた内容は、問診や視触診、血液検査、マンモグラフィ、必要に応じた超音波検査など

なお、国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、問診や視触診は治療終了後3年間は3〜6か月ごと、4〜5年目は6〜12か月ごと、5年目以降は年1回の頻度が勧められています。また乳房部分切除後は、手術した乳房や反対側の乳房に対し、年1回程度のマンモグラフィが推奨されています。

ただし、必要な検査や頻度は一人ひとり異なります。ご自身の場合については、主治医に確認してください。

参考:国立がん研究センター「がん情報サービス」乳がん 療養

この頃から私は、検査だけに安心を求めるのではなく、普段から自分の乳房や体の変化にも目を向けて、気になることがあれば主治医に相談しようと思うようになりました。

経過観察は、「何もしない時間」ではありませんでした。

定期的に診てもらい、自分でも体の変化に目を向け、気になることがあれば相談する。

私にとっては、その繰り返しが経過観察だったのだと思います。

治療終了後の最初の3年間は年3回ほど、その後は年1回受けていた経過観察の流れを示した図

私が受けていた約10年間の経過観察の流れです。

不安は、何でもない日常の中で突然やってきました

それでも、再発への不安がすぐになくなることはありませんでした。

いつもと違う痛みや違和感を感じたとき。

誰かの再発の話を聞いたとき。

そんな何気ない瞬間に、「私も再発したらどうしよう」という気持ちが、突然戻ってくることがありました。

以前の私は、不安になるたびに「こんなに心配していてはいけない」と思っていました。

でも、だんだんと、不安になっている自分まで否定しなくてもいいのではないかと思うようになりました。

怖いものは、怖い。

不安なものは、不安。

無理に消そうとするのではなく、その気持ちを抱えながらも、病気以外のことを考えられる時間を少しずつ増やしていきました。

その一つが、韓国ドラマでした。

物語の世界に夢中になっている間だけは、病気のことを忘れられる。

それは、思っていた以上に大切な時間でした。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「今日は少し笑えた」

「続きが楽しみだから、明日も見よう」

そんな小さな楽しみが、私を日常へ戻してくれました。

体の違和感や再発の話で不安になったあと、韓国ドラマを見て少し笑顔を取り戻す女性の4コマ漫画

病気を忘れられる小さな楽しみが、私を少しずつ日常へ戻してくれました。

韓国ドラマについては、間質性肺炎で入退院を繰り返していた頃の話として、第27話に詳しく書いています。

「再発を防ぎたい」と必死だった私が、あとから気づいたこと

治療を終えたばかりの私は、「再発しないために、自分でできることはないだろうか」と必死に探していました。

同じ乳がんを経験した方のブログを読んだり、医療者が書いた本を読んだり。

その中から、自分にできそうなことを少しずつ生活に取り入れていきました。

食事は、野菜や魚などを意識しながら、できるだけバランスよく。

体調の良い日は歩いたり、朝に軽くストレッチをしたり。

睡眠を大切にして、無理をしすぎない。

再発への不安が特に強かった最初の3年間は、大好きだったビールもやめました。

そして、主治医から言われた

医師
医師

「毎日、笑顔で過ごしてくださいね」

という言葉も、私の心の支えになりました。

もちろん、笑顔や生活習慣だけで再発を防げるということではありません。

ただ、あの頃の私にとって、「自分のために今日できることを一つする」という行動は、再発への不安に飲み込まれないための支えになっていました。

再発への不安から情報を探し、食事や散歩など自分にできることを続けながら、体を大切にしようと思うようになった女性の4コマ漫画

再発への不安の中で始めた小さな行動は、やがて自分の体を大切にすることへとつながっていきました。

今振り返ると、生活習慣を変えたことそのものよりも、大きかったことがあります。

それは、「自分の体を大切にしよう」と思えるようになったことです。

病気になる前の私は、仕事や家事、子どもたちのことを優先して、自分のことはいつも後回しでした。

乳がんになって初めて、自分の体や心に目を向けるようになったのです。

これは、乳がんになってよかったということではありません。

できることなら、病気にはなりたくありませんでした。

それでも、あの頃の私は、まず自分の体に目を向けることから始めていました。

経験からお答えするQ&A|治療後の経過観察について

Q. 症状がないうちに、検査を増やしてもらうことはできないのでしょうか?

A. 私も同じことを考えて、主治医に頼んだことがあります。検査を増やせば安心できると思っていました。

国立がん研究センター「がん情報サービス」では、症状がなく経過が順調な場合、定期的な診察と年1回程度のマンモグラフィ以外の検査を受けるメリットは少ないとされています。症状がない段階で再発を見つけて治療を始めた場合と、症状が出てから治療を始めた場合とで、生存期間に差がなかったという報告が複数あるためです。また、早く治療を始めた分だけ薬物療法などの期間が長くなり、体や経済面の負担が大きくなるという見方もあるそうです。

ただし、必要な検査は一人ひとり異なります。不安なときは、その気持ちも含めて主治医に相談してみてください。


Q. 気になる症状が出たとき、次の定期診察まで待った方がよいのでしょうか?

A. 私は経過観察中、気になることがあれば主治医に相談しようと考えるようになりました。ただ、どのような症状のときに、どのくらい早く受診した方がよいかは、病状や受けた治療によって異なります。

心配な症状があるときは、次の定期診察を待つかどうかも含めて、通院先の医療機関に問い合わせて相談してみてください。判断に迷う状態を一人で抱え込まないことが、私は大切だったと感じています。

経過観察中に不安になったときの対応を、診察室での相談、自宅での迷い、通院先への電話相談の4コマで示した説明画像

経過観察中に不安になったときは、一人で抱え込まず、主治医や通院先に相談することが大切です。

10年間の経過観察を終えた日

3年。5年。そして10年。

時間がたつにつれて、病気のことを考えずに過ごせる日も少しずつ増えていきました。

そして2024年1月。

主治医から、トリプルネガティブ乳がんの経過観察はこれで終了になること、もう大丈夫だということを伝えられました。

私はその説明を、「乳がんは完治した」と受け止めました。

うれしさと、体の力が抜けるような安心が、同時にやってきました。

診断から10年以上続いた通院に、ひとつの区切りがついた日でした。

約10年間の経過観察が終了になると主治医から伝えられ、安堵する女性

主治医の言葉を聞いた瞬間、長く抱えてきた緊張がゆっくりとほどけていきました。

そして現在は、私自身の希望で、告知を受けたクリニックで年に1度、乳房の状態を確認しています。

主治医による経過観察は終わりましたが、自分の体と向き合う時間は、今も続いています。

区切りのあとも検査を続けると決めた理由は、第32話に書いています。

さいごに|不安がなくなってから、前を向けたわけではありません

10年間を振り返って思うのは、私は、不安が完全になくなってから前を向けたわけではなかった、ということです。

怖い日も、検査前に眠れない日もありました。

それでも、その日その日を暮らしてきました。

そんな毎日の積み重ねが、気づけば10年になっていたのです。

私がこの10年間、大切にしてきた言葉があります。

「今を大切に生きる」

先のことを考えると、今でも不安になることはあります。

だからこそ私は、目の前にある一日を大切にしたいと思っています。

経過観察が終わったあと、私にはどうしてもやっておきたいことが、いくつか残っていました。

長いあいだ心に引っかかっていたことを、ひとつずつ終えていく。

そうしてようやく落ち着いたとき、私は初めて思ったのです。

これからの時間を、私はどう生きていきたいのだろう。

経過観察を終え、自宅のノートに「今を大切に生きる」と書きながら、これからの時間を考える女性

長い経過観察を終え、これからの時間をどう生きるかを考え始めました。

治療が終わったら元通りになると思っていた私が、10年かけてたどり着いたのは、その問いでした。

次回、第41話では、経過観察を終えた私が最初にした4つのこと、そしてそのあとに考えた、これからの生き方について書いています。

第41話はこちらから↓

この記事を書いた人

きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター

乳がんを経験し、経過観察を経てひとつの区切りを迎えました。

その後、義妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えてきた経験をもとに、患者と家族の視点で記事を書いています。

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