【第47話】乳がん治療中、私が手帳に書いていた6つのこと|始まりはただのメモでした

乳がん体験記
※この記事は、私が2013年に乳がんと診断され、治療を受けた当時の体験をもとに書いています。
※手帳への記録は、診察や医療者への相談に代わるものではありません。
※治療や体調について気になることがある場合は、主治医などの医療者に相談してください。

始まりは、自宅にあったメモ帳でした

「乳がんです」

そう告げられた日のことは、今でも覚えています。

先生の話を聞いているはずなのに、言葉が耳を通り過ぎていくようで、うまく頭に残りませんでした。

告知後、検査や診察の予定が増えてくると、これからどんな検査をするのか、次はいつ病院へ行くのか、何を聞けばいいのか、一度にいろいろなことを考えなければならなくなりました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「これは、何かに書いておかないと分からなくなる」

そう思って手に取ったのが、自宅にあったメモ帳でした。

新しく何かを買ったわけでもなく、「記録を残そう」と決めたわけでもありません。

始まりは、本当にただのメモでした。

次の診察日。

検査の予定。

先生に聞きたいこと。

忘れてはいけないことを、ひとつずつ書いていっただけです。

乳がん告知後、病院で不安を抱え、自宅で考え込み、メモ帳に予定や質問を書き始める女性を描いた4コマ漫画

頭の中に抱えていたことを、少しずつ紙の上へ。

治療の予定が増えて、手帳を買いました

ところが治療が始まると、書くことは少しずつ増えていきました。

診察の予定に、検査の予定。抗がん剤治療の日。

治療の予定が増えてきたので、1か月の予定をひと目で確認できる手帳を買いました。

手帳に変えてからは、書く内容がさらに増えていきました。

治療の予定だけではありません。

体調のこと、お金のこと、子どもの予定。

そして、ときには誰にも言えなかった自分の気持ちまで。

気づけば手帳は、乳がん治療と、それまで続いていた日常が重なる毎日を、私なりに整理するための一冊になっていました。

書き溜めた手帳の写真

気づけば、手帳は私の毎日に欠かせない存在になっていました

治療中、私が手帳に書いていた6つのこと

今振り返ると、手帳に書いていたことは大きく6つに分けられます。

特別な方法ではありません。

必要になったことを、その都度書いているうちに、自然とこうなっていきました。

① 治療や検査の予定

まず書いていたのは、病院の予定です。

診察日、検査日、抗がん剤治療の日など、治療に関する予定を一冊にまとめていました。

書いておくことで、次の診察や治療がいつなのかを確認できました。

「この週は治療があるから、少し余裕を持っておこう」

と考えることもできました。

次々と決まっていく予定を一冊で確認できたことは、私にとって安心につながっていました。

治療のメモの写真

乳がんと診断された後、検査や入院予定を書き留めていた当時の手帳

② その日の体調を短く

治療中は、その日の体調を短く書くこともありました。

「今日はしんどかった」

「少し食べられた」

「昨日より楽だった」

その程度の一言です。

毎日きちんと記録していたわけではありません。

書けない日は書かない。

何か気になったときだけ、一言残す。

そのくらいでした。

体調のメモの写真

治療中、体の変化や気になったことを書き留めていた当時の手帳

それでも後から見返すと、

「この頃はこんな状態だったんだ」

と分かります。

診察で体調について聞かれたときに、手帳を見ながら思い出すこともありました。

③ 先生に聞きたいこと、伝えたいこと

診察前には、先生に聞きたいことを書いておきました。

診察室に入ると、私はどうしても緊張してしまいます。

家では「これを聞こう」と思っていたのに、先生の前に座ると忘れてしまうこともありました。

そこで、

「次の治療について確認したいこと」

「体調で気になっていること」

などを、思いついたときに手帳へメモしていました。

メモの写真

診察前に、先生へ確認したいことを書き留めていた当時の手帳

聞きたいことだけではありません。

先生に伝えたいことも、手帳に書いていました。

今も手帳に残っているのが、「減薬しないでほしい」と先生に伝えたときのメモです。

メモの写真

パクリタキセル治療中、先生に伝えたいことを書き留めていた当時の手帳

今読み返すと、治療に向き合っていた当時の自分の気持ちが、そのまま残っているように感じます。

治療の進め方は、体の状態や治療の内容によって一人ひとり違います。

これはあくまで、当時の私がそう伝えたというだけの話です。

診察中に説明されたことも、必要に応じて短く書き留めました。

全部を完璧に記録するのではなく、忘れたくないことだけを書いておく。

それだけでも、私には十分役立ちました。

④ 治療にかかったお金

治療が始まると、医療費だけではなく、通院の交通費など、いろいろな支出が増えていきました。

私は家計簿のように細かく管理していたわけではありません。

体調が良いときは、金額まで書いていました。

でも毎回ではなく、項目だけの日もありました。

今読み返すと、記録はまちまちです。

メモの写真

治療中、かかった費用などを簡単に書き留めていた当時の手帳

領収書は、念のため5年間保管していました。

私自身は、医療費控除には使いませんでした。

家計アプリより、紙に書く方が私には合っていたのだと思います。

当時の私にとって手帳は、お金のことを頭の中だけで抱え込まず、目で確認できる場所でもありました。

⑤ 誰にも言えなかった気持ち

これは、予定やお金の記録とは少し違います。

乳がんと診断されてからは、不安になったり、落ち込んだり、腹が立ったり。

自分でも驚くほど、気持ちが揺れることがありました。

でも、そのすべてを家族に話していたわけではありません。

心配させたくない。

暗い話ばかりしたくない。

そんな気持ちから、言葉を飲み込むこともありました。

そんなとき、私は手帳に書きました。

「今日は不安だった」

「思っていたより、私は強くないな」

「今日は少し頑張れた」

誰かに見せるための文章ではないので、きれいに書く必要もありません。

そのとき思ったことを、そのまま書くだけです。

書いたから不安がなくなるわけではありません。

それでも私の場合は、頭の中にあったものを文字にすると、

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「私は今、これが不安なんだ」

と、自分の気持ちに気づけることがありました。

不安や焦りだけでなく、嬉しかったことや、子どもとの何気ない会話を書いた日もあります。

「治療が終わったら、こんなことができたらいいな」

と書いた日もありました。

手帳は、答えをくれるものではありません。

でも、誰にも言えなかったことを置いておける場所にはなっていました。

家族と過ごす時間のあと、一人になって不安を抱え、手帳に気持ちを書き留める女性を描いた4コマ漫画

誰にも見せないページだからこそ、書けたことがありました。

⑥ 家族の予定も、同じ手帳に

乳がん治療中だからといって、毎日が病気だけになるわけではありませんでした。

子どもの学校行事。

誕生日。

家族との約束。

お願いしておきたいこと。

そうした予定も、治療の予定と同じ手帳に書いていました。

抗がん剤治療の予定の隣に、家族との予定が書いてある。

今見ると、それが当時の私の生活そのものだったように思います。

私の乳がん治療と、子どもの入院が重なった時期もありました。

治療のことと子どものことが重なって、とてもつらかったことを覚えています。

つらい治療の日もありました。
でも、その少し先には家族との予定がありました。

手帳を開くことで、病気だけではない自分の日常も見えていました。

家族の支度を整える朝から病院へ向かう時間、予定が重なる時期、夕方に静かに暮らしを見つめる様子までを描いた4コマ漫画

病院へ向かう日にも、暮らしの段取りは止まりませんでした。

きれいに書こうとしなかったから、続きました

手帳というと、

「毎日書かなければ」

「きれいにまとめなければ」

と思ってしまうかもしれません。

私も以前、張り切って手帳を使い始めたのに、続かなかったことがありました。

でも乳がん治療中の手帳は違いました。

続けることを目的にしなかったからです。

私が大切にしていたのは、こんなことでした。

  • 一行だけでもいい
  • 書きたいときだけ書く
  • 空白の日があっても気にしない
  • きれいにまとめようとしない
  • お気に入りのペンやシールを使う

お金の記録もそうでした。

書ける日は金額まで、書けない日は項目だけ。

書けない日は、書かない。

手帳を完成させることが目的ではありません。

その日の自分が困らないために、必要なことだけを書いておく。

そのくらいの気持ちだったから、続けられたのだと思います。

女性が木の机で、文字の内容が読めない手帳に青いペンで記録している手元の水彩イラスト

空白の日があっても、また開けばそれで十分でした。

今、当時の手帳を開いて思うこと

あれから長い時間が経ちました。

今でも当時の手帳を開くことがあります。

そこに残っているのは、治療の日付や検査の予定だけではありません。

怖かった日。

体調が悪かった日。

子どものことを心配していた日。

少し食欲が戻って外食できた日。

先生から聞いた言葉。

そのときの私が考えていたこと。

小さなメモを見るだけで、忘れていた出来事まで思い出すことがあります。

乳がんと診断されたとき、私はこれからどうなるのか分からず、不安でいっぱいでした。

そんな私が始めたのは、「忘れないように書いておこう」という、本当に小さなことでした。

でも振り返ってみると、必要なことを書き残してきたことで、治療、家族、お金、自分の気持ちを、一度に全部頭の中で抱えなくてもよくなっていました。

私にとって手帳は、何かを解決してくれるものではありませんでした。

ただ、抱えていることをいったん紙の上に置いておける場所でした。

それが、長い治療生活の中で私を支えてくれたのだと思います。

今、当時の手帳を読み返して、あの頃の自分に声をかけるとしたら。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「必死やったんやね。頑張ったね。」

そう言ってあげたいと思います。

治療当時に使っていた手帳を、年月を経て静かに読み返している女性の手元のイラスト

ページをめくるたび、あの頃の私が少しずつよみがえってきました。

今、治療中で頭の中がいっぱいになっている方も、きれいな手帳を作る必要はないと思います。

もし書いてみようと思ったら、今日気になったことを一つだけ。

私も、そんな小さなメモから始まりました。

治療を終えた頃、ふと考えたこと

当時の手帳を読み返していると、治療のことだけではなく、食事や睡眠、忙しかった毎日のことも残っています。

そして治療を終えた頃、私はふと、

「どうして私は乳がんになったのだろう」

と考えるようになりました。

もちろん、がんになる原因を生活習慣だけで説明することはできません。

それでも、自分が乳がんになる前にどんな毎日を送っていたのかを振り返ることは、これからの暮らしを考えるきっかけになりました。

次回は、乳がんになる前の私の生活を振り返ります。

第48話はこちらから↓

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この記事を書いた人
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し、経過観察を経てひとつの区切りを迎えました。
その後、義妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えてきた経験をもとに、患者と家族の視点で記事を書いています。
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