2024年6月。
私は約11年ぶりに、乳がんを最初に見つけてもらったクリニックを訪れました。
その年の1月、10年以上続いた経過観察が終了し、主治医から、もう大丈夫だということを伝えられました。
私はその説明を、「乳がんは完治した」と受け止めました。
ずっと待ち望んでいた、ひとつの区切りでした。
けれど私は、「これでもう、何もしなくても大丈夫」とは思いませんでした。
これまで長い間、自分の体と向き合いながら検査を受けてきたからこそ、これからも年に一度は乳房の状態を確認していきたい。
そう考え、私は再びこのクリニックを訪れることにしました。

10年以上の経過観察を終えたあとも、年に一度は乳房の状態を確認しようと決め、私は再びクリニックを訪れました。
約11年ぶりに、乳がんを最初に見つけてもらったクリニックへ
診察室に入り、久しぶりに先生の顔を見たとき、なんともいえない懐かしさがこみ上げてきました。
先生と顔を合わせ、お互いに笑いながら、
「年をとりましたね」
そんな言葉を交わしました。
たった一言でしたが、私はなんだかほっとしました。
このクリニックを訪れた頃の私は、乳がんと告げられ、これから自分がどうなってしまうのかも分からず、不安でいっぱいでした。
あの日の診察室。先生の声。乳がんと分かった日の帰り道。
いろいろな記憶が、つい昨日のことのようによみがえってきました。

先生との再会をきっかけに、乳がんと告げられた日からの記憶が一気によみがえりました。
あれから11年。
私は抗がん剤治療を受け、手術、放射線治療を経験しました。
その後、放射線肺臓炎や間質性肺炎とも向き合いながら、長い時間を歩いてきました。
そして今、こうして元気に先生の前に座っている。
そのことが、なんだかとても不思議に感じられたのです。
私は、それまで治療と経過観察を受けていた病院から預かった資料と紹介状を先生に渡しました。
そこには、私が歩いてきた10年以上の時間が詰まっているように感じました。

治療と経過観察を受けていた病院から預かった資料には、私が歩いてきた10年以上の時間が詰まっているように感じました。
10年以上たった今、私が受けた検査
久しぶりに先生と話をしたあと、検査を受けました。
この日に受けたのは、マンモグラフィ、乳房超音波検査(エコー)、胸部X線検査、血液検査です。
マンモグラフィの画像には石灰化が見られました。
今回見られた石灰化について、先生からは、
「カルシウムが沈着している状態なので、心配ないですよ」
と説明を受けました。
乳房超音波検査でも、乳房の状態を丁寧に確認していただきました。
先生からは、乳がんは肺や肝臓などに転移することがあると説明を受けました。
胸部X線検査は、肺の状態を確認するために受けました。
また当時、私は放射線肺臓炎の薬を服用していたこともあり、その経過も踏まえて検査を受けることになりました。
血液検査の結果は、この日ではなく、後日あらためて聞くことになりました。
肝臓については、血液検査の結果を聞きに行った日に超音波検査を受けました。

この日は4種類の検査を受け、後日、血液検査の結果説明と肝臓の超音波検査を受けました。
ただし、これらは私自身の病歴や治療後の経過を踏まえ、先生と相談しながら受けた検査です。
乳がんを経験した人が、全員同じ検査を受けるわけではありません。
必要な検査や受ける頻度は、一人ひとりの状態によって異なります。
検査を受けている間、私はやはり少し緊張していました。
それでも今回は、以前とは少し違いました。
怖さだけを抱えて検査を受けるのではなく、
「今の自分の体の状態を、きちんと確認しておこう」
そんな気持ちで検査に向き合うことができたのです。
「異常ありませんよ」に、ほっとした瞬間
検査を終え、先生から結果を聞く時間になりました。
胸部X線検査については、検査後すぐに結果の説明を受けました。
そして、マンモグラフィと乳房超音波検査の結果を聞くとき、私はやはり緊張していました。
「何か見つかったらどうしよう」
何度検査を経験しても、結果を聞く瞬間は落ち着きません。
けれど先生から、乳房の検査結果について、
「異常ありませんよ」
と聞いた瞬間、張りつめていた気持ちがふっとゆるみました。
「ああ、よかった」
心の中で、そうつぶやきました。

何度検査を経験しても結果を聞く瞬間は緊張します。「異常ありませんよ」と聞き、張りつめていた気持ちがゆるみました。
血液検査の結果説明と肝臓の超音波検査は、後日あらためて受けることになっていました。
それでもこのときは、乳房に異常がなかったことに、素直にほっとしました。
経過観察を終えたあとも、私が検査を続けると決めた理由
2024年1月。
10年以上続いた経過観察が終了し、主治医から、もう大丈夫だということを伝えられたとき、私は本当にうれしかったです。
私はその説明を、「乳がんは完治した」と受け止めました。
ずっと待ち望んでいた、ひとつの区切りでした。
けれど、経過観察が終わったからといって、これからは自分の乳房のことを何も気にしなくていい、とは思いませんでした。
乳がんを経験する前の私は、毎年検診を受けていたことで、どこか安心していたところがあります。
それでも、自分でしこりに気づき、乳がんが見つかりました。
だからこそ今は、年に一度の検査を受けることと同時に、普段から自分の乳房の状態を知っておくことも大切にしたいと思っています。
検査そのものが、再発を予防するわけではありません。
私にとっては、その時点での乳房の状態を確認し、これからの過ごし方を考えるための時間です。
そして、もし「いつもと違う」と感じる変化があれば、年に一度の検査まで待たずに医療機関へ相談する。
乳がんを経験したからこそ、私はそう考えるようになりました。

経過観察の終了をひとつの区切りとして、これからも年に一度は乳房の状態を確認していこうと決めました。
乳がん検診と、普段から自分の乳房の状態を意識する「ブレスト・アウェアネス」については、第29話で詳しく書いています。
第29話はこちらから↓
私が「乳がんは完治した」と受け止めたことは、乳がんのことをすべて忘れてしまうという意味ではありませんでした。
長かった治療と経過観察に、ひとつの区切りがついた。
その区切りを迎えたうえで、これからも年に一度は乳房の状態を確認していく。
それが、私が自分で決めたことでした。
乳がん治療後の検査について、私も気になったこと
10年以上の経過観察が終わったとき、私自身も、
「これからの検査は、どうしたらいいのだろう」
と思いました。

経過観察が終わったあと、これからどのような検査が必要なのか、私自身も疑問に感じました。
同じような疑問を感じる方もいるかもしれません。
ここでは、治療後の検査について私が気になったことをまとめます。
よくある疑問をQ&Aでまとめました
Q. 経過観察が終わったら、もう検査を受けなくてもいいのでしょうか?
A. 治療後にどのような診察や検査を続けるのかは、受けた治療やその後の経過によって異なります。
国立がん研究センターの「がん情報サービス」では、乳房部分切除後は、手術した乳房や反対側の乳房に対して、年に1回程度マンモグラフィを受けることが推奨されています。
ただし、それ以外に必要な検査や頻度は、一人ひとり異なります。
私の場合は、10年以上の経過観察を終えたあとも、年に一度は乳房の状態を確認していくことにしました。
今後の検査について迷ったときは、経過観察が終わるタイミングで、自分の場合はどのようにしたらよいのかを主治医に確認しておくと安心だと思います。
Q. 胸部X線や血液検査なども、毎年受ける必要がありますか?
A. すべての乳がん経験者が、毎年同じ検査を受けるわけではありません。
国立がん研究センターの「がん情報サービス」では、症状がなく経過が順調な場合、定期的な診察や年1回程度のマンモグラフィ以外の検査を受けるメリットは少ないとされています。
今回、私はマンモグラフィや乳房超音波検査のほかに、胸部X線検査と血液検査を受け、後日、肝臓の超音波検査も受けました。
これは、私自身の病歴や治療後の経過を踏まえて、先生と相談して受けた検査です。
この記事で紹介した検査を、乳がんを経験した人が毎年すべて受けるものとは考えず、
「私には、これからどのような検査が必要ですか?」
と、自分の状態について主治医に確認することが大切だと思います。
私もこれから、分からないことや気になることがあれば、その都度先生に相談しながら、自分に必要な検査を受けていこうと思っています。

経過観察終了後に必要な検査は一人ひとり異なります。自分の場合はどのようにしたらよいか、主治医に確認しておくことが大切です。
検査が怖い気持ちは、今もなくなったわけではありません
乳がんを経験したあと、検査の日が近づくと不安になる。
そんな方もいるのではないでしょうか。
私も、そうでした。
治療後しばらくは、検査が近づくたびに落ち着かず、ちょっとした体の変化にも敏感になっていました。
10年以上たった今も、検査の前にまったく不安がないわけではありません。
でも以前と違うのは、その不安を無理になくそうとしなくなったことです。
怖いと感じてもいい。
不安になってもいい。
その気持ちを抱えたままでも、検査を受けることはできる。
今は、そう思えるようになりました。

検査への不安がなくなったわけではありません。それでも今は、不安を抱えたまま検査を受けに行けるようになりました。
乳がんを経験したからこそ、検査の日には今でも少し緊張します。
けれどその一方で、
「今年も、自分の体の状態を確かめる日が来たんだ」
そんなふうにも思えるようになっています。
不安がなくなったのではありません。
不安との付き合い方が、少しずつ変わってきたのだと思います。
乳がん治療後、検査のたびに感じた再発への不安と、その不安に飲み込まれないために続けてきた暮らしの工夫は、第25話で詳しく書いています。
第25話はこちらから↓
11年前とは違う気持ちで歩いた帰り道
2013年6月。
私は、このクリニックで乳がんと診断されました。
あの日、病院を出てから、どうやって家まで帰ったのか。
今でも、はっきりとは思い出せません。
これから治療はどうなるのだろう。
私はどうなってしまうのだろう。
頭の中が真っ白で、周りの景色を見る余裕もありませんでした。
そして、あれから11年。
2024年6月、私は再び同じクリニックを訪れました。
検査を終え、先生から乳房の検査結果について「異常ありませんよ」と聞いたあと、私はゆっくりと景色を眺めながら帰りました。
街路樹を見ながら歩いていると、ふと思いました。
「私、ここまで来たんだな」

11年前には見る余裕のなかった景色を、今はゆっくり眺めながら歩けるようになりました。
抗がん剤治療を受け、手術を受け、放射線治療を受けました。
その後は、放射線肺臓炎や間質性肺炎とも向き合いました。
不安で眠れなかった夜もありました。
検査結果を聞くまで、落ち着かなかったこともあります。
それでも、一年一年を重ねながら、私はここまで歩いてきました。
11年前は、何も見えないような気持ちで歩いた帰り道。
今は、同じ場所から、目の前の景色を眺めながら帰ることができる。
そのことが、とてもありがたく感じられました。
あの日の私には、11年後、こんなふうに穏やかな気持ちで同じ道を歩いている自分を想像することはできませんでした。
だから今、不安の中にいる方にも伝えたいと思います。
先のことを考えると、怖くなる日もあると思います。
私も、そうでした。
それでも私は、一年一年を重ねながら、少しずつここまで来ることができました。
乳がんを経験して、もう一つ気づいた「備え」のこと
乳がんを経験して、私は自分の体と向き合うことの大切さを知りました。
そして治療中には、体のことだけでなく、治療費やこれからの生活について不安を感じることもありました。
そんなとき、病気になる前からしていた備えについて、あらためて考えるようになりました。

治療中のお金への不安を通して、病気になる前から備えておくことの大切さを、あらためて感じました。
保険に入った時期や、乳がんの治療後に保険の見直しを考えたとき、私がどのように感じたのか。
次回・第33話では、治療中のお金の不安と、保険についての私自身の経験を振り返ります。
「がん保険は、いつ考えればいいの?」
そんな疑問を持っている方へ、私が経験したことをお伝えします。
第33話はこちらから↓
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