「どうして私は乳がんになったんだろう?」
乳がんの治療を終えたあと、私はときどき自分の病気について考えることがありました。

「どうして私は乳がんになったんだろう?」
家族や周りを見渡せば、自分と同じような生活をしていても、がんにならない人もいます。
反対に、とても健康に気をつけて暮らしていた人が、がんになることもあります。
それなのに当時の私は、
「食生活が悪かったのかな」
「もっと眠っていればよかったのかな」
「毎日忙しくしすぎたのかな」
そんなふうに、乳がんになる前の自分の生活の中に「原因」を探そうとしていました。
がんは、生活習慣だけで決まるものではありません
調べていくうちに、私は大切なことを知りました。
がんは、細胞の遺伝子が傷つくことなどによって起こる病気です。
そして、その発症には一つではなく、さまざまな要因が関わっています。
国立がん研究センターも、がんを完全に防ぐことはできない一方、生活習慣などを見直すことで「がんになりにくくする」ことはできると説明しています。
つまり、
生活習慣は、がんのリスクに関わる要因の一つではあっても、それだけで「がんになった原因」を説明できるものではない。
このことを知って、私は少し考え方が変わりました。
それでも、乳がんになる前の生活を振り返ってみました
原因を一つに決めることはできない。
そう分かっていても、自分のこれまでの暮らしを振り返ることには意味があると思いました。
乳がんと診断された当時、私は51歳。
仕事、家事、3人の子どもたちのこと、PTAや日々の用事。
毎日やることがたくさんあり、自分のことはいつも後回しでした。

「私、本当に余裕のない生活をしていたな」
今振り返ると、そんなふうに思います。
毎日のようにお酒を飲んでいました
当時の私は、ビール350mlに加えて酎ハイを飲むこともあり、お酒が毎日の習慣になっていました。
一日の終わりに飲むことが、気持ちを切り替える時間にもなっていたのだと思います。
乳がんと飲酒の関係について、当時の私はほとんど知りませんでした。
現在、国立がん研究センターでは、飲酒は乳がんの発生リスクを高める要因の一つとされ、特に閉経前女性の乳がんではリスク上昇との関連が示されています。
ただし、だからといって、
「お酒を飲んでいたから私が乳がんになった」と断定することはできません。
私にとっては、診断後に初めて知った「見直すことのできる要因」の一つでした。
※飲酒と乳がんについては、第51話で詳しく振り返っています。
「少しなら大丈夫?」と思っていた私が、飲酒と乳がんの関係を調べて知ったことをまとめました。
私は初経が早い方でした
私は小学4年生で初経を迎えました。
乳がんと診断されるまでは、それが乳がんのリスクと関係する可能性があることさえ知りませんでした。
乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが関係しており、初経年齢が低いことは乳がんのリスクを高める要因の一つと考えられています。
もちろん、初経の時期は自分で選べるものではありません。
だから、これは「気をつければよかった」という話ではなく、
乳がんには、自分では変えることのできない要因もある
と知った一つのきっかけでした。
睡眠不足やストレスも「乳がんの原因」だと思っていました
当時の私は、睡眠時間が5時間ほどの日も多く、仕事や家事、子どものことなどでいつも頭がいっぱいでした。
だから以前は、
「睡眠不足で免疫力が落ちたから乳がんになったのでは?」
「ストレスが多かったからでは?」
と考えたこともあります。
でも現在は、そのようには考えていません。
睡眠は心身の健康を保つために大切ですが、睡眠時間とがんの発症リスクについては研究結果が一定していません。
また、慢性的なストレスがさまざまな健康問題につながることは知られていますが、ストレスそのものが乳がんを発症させるかどうかについては、はっきりしていません。
実際、乳がんとストレスとの関連を認めなかった研究もあります。
ですから、
「ストレスが多かったからがんになった」
「前向きに考えればがんを防げる」
という単純な話ではありません。
これは、乳がんを経験した私自身が特に大切にしたいことです。
変えられる要因と、変えられない要因がありました
自分の生活を一つずつ振り返っていくうちに、私はあることに気づきました。
乳がんのリスクに関わる要因には、自分では変えることのできないものと、これから見直せるものがある。
ということです。
初経の年齢や家族歴、遺伝的な要因などは、自分で変えることのできない要因です。
一方で、飲酒、運動、閉経後の体重管理などは、これからの生活の中で見直すことができます。
国立がん研究センターでは、乳がんのリスクに関わる生活習慣として、飲酒、閉経後の肥満、運動不足などを挙げています。
BRCA1やBRCA2などの遺伝子の変化が関係する遺伝性乳がんもありますが、こうした遺伝子の変化があるからといって必ず乳がんになるわけではありません。家族歴などから遺伝的なリスクが気になる場合には、遺伝カウンセリングなど専門家に相談する方法があります。
がんのリスクを減らすために、今できること
国立がん研究センターが紹介している「日本人のためのがん予防法」では、
- たばこを吸わない
- 飲酒をひかえる
- 食生活を見直す
- 日常生活で体を動かす
- 適正な体重を保つ
- がんの原因となる感染への対策をする
という「5+1」が示されています。
乳がんについては特に、飲酒を控えること、閉経後の肥満を避けるための体重管理、適度に体を動かすことなどが勧められています。
私も乳がんを経験してから、自分の生活について考えるようになりました。
ただし、
「これをすれば、もうがんにはならない」
と思っているわけではありません。
第40話でも書いたように、治療後には再発への不安から、生活習慣を意識する時期がありました。
でも今は、
未来の病気を完全にコントロールするためではなく、今の自分の体を大切にするために生活を整える。
そんなふうに考えています。
「なぜ私が?」の答えを探し続けなくてもいい
乳がんになったばかりの頃は、
「何が悪かったんだろう」
「何をしなければよかったんだろう」
と過去を振り返ってしまうことがありました。
でも、乳がんにはさまざまな要因が関係しています。
同じ生活をしていても、乳がんになる人もいれば、ならない人もいます。
健康に気をつけていても、がんになることはあります。
だから今の私は、
乳がんになった理由を、自分の過去の生活だけに求めなくてもいい。
そう思っています。
生活習慣について知ることは、自分を責めるためではありません。
これから先を少しでも健やかに暮らすために、
「今の私にできることは何だろう」
と考えるためのものなのだと思います。
きゃんばぁば
過去の自分を責めるのではなく、これからの自分を大切にしていきたい。
乳がんを経験して、私がたどり着いた答えの一つです。
次回は、治療が始まる前の時間へ戻ります
ここまで、治療を終えたあとに私が生活を振り返って感じたことを書いてきました。
次回は少し時間を戻して、2013年、抗がん剤治療が始まる前のお話です。
抗がん剤と聞いて、私がまず不安になったことの一つが「髪の毛が抜けること」でした。
まだ脱毛が始まっていないうちにウィッグを探しに行き、実際に試着してみたことで、少しだけ気持ちが軽くなったことを振り返ります。
49話はこちらから↓
「抗がん剤前に始めるウィッグ準備|脱毛の不安を減らす『試着と情報収集』のすすめ」
※この記事は、筆者自身の乳がん経験と、国立がん研究センターなどの公開情報を参考にまとめています。がんの発症要因やリスクは一人ひとり異なります。ご自身の健康や検査、遺伝的なリスクなどについて心配がある場合は、主治医などの医療者にご相談ください。
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