今回は少し時間を戻して、私が乳房の異変に気づいたときのことを振り返ります。
私は毎年、乳がん検診を受けていました。
それまで異常を指摘されたことはなく、健康にも自信がありました。
「乳がんは、自分には関係のない病気」
どこかで、そう思っていたのです。

毎年検診を受けていた私は、乳がんが自分の身に起こるとは思っていませんでした。
けれど51歳のとき、右胸に小豆ほどの硬いしこりがあることに気づきました。
今回は、しこりに気づいて受診した私自身の経験から、乳がん検診を受けることと、普段から乳房の変化を気にかけること、その両方が大切だと感じた理由をお伝えします。
毎年検診を受けていた私が、右胸のしこりに気づくまで
その日のことは、今でもよく覚えています。

右胸に触れた指先に、今までとは違う小さな硬さを感じました。
指先に触れたのは、小豆ほどの硬いしこりだった
右胸の異変に気づいたのは、自分で乳房に触れたときでした。
指先に、小豆ほどの硬いしこりが触れたのです。

「これは何だろう」
気になった私は、乳がんにはどのような症状があるのかを調べました。
そのあと、鏡の前で右腕を上げ、乳房の状態を確認しました。

指先に感じた硬さが気になり、乳がんの症状を調べてから鏡で確認しました。
私は毎年乳がん検診を受けていたので、

「検診で異常がなかったのだから、大丈夫じゃないかな」
そう思いたい気持ちもありました。
けれど、指先に触れたしこりの硬さが、どうしても気になりました。
ひきつれと茶色い分泌物にも気づき、乳腺外科を受診した
鏡の前で乳房を見ると、右胸の皮膚にひきつれがありました。
さらに、乳頭から茶色い分泌物も出ていました。
どれも、それまでの私にはなかった変化でした。
「やっぱり、いつもと違う」

しこりだけではなく、見た目にも今までとは違う変化がありました。
しこりだけではなく見た目にも変化があったため、私は乳腺外科を受診しました。
詳しい検査を受けた結果、乳がんと診断され、その後、トリプルネガティブ乳がんであることも分かりました。
しこりに気づいた経験から伝えたい4つのこと
毎年乳がん検診を受けていた私が、自分でしこりに気づき、乳腺外科を受診した経験から、今伝えたいことが4つあります。
乳がん検診を受けることは大切です。ただ、それだけですべての変化に気づけるとは限りません。
普段から自分の乳房の状態を知ること、いつもとは違う変化をそのままにしないこと、症状があるときは次の検診を待たずに受診すること。

私自身の経験から、今伝えたい4つのことをまとめました。
ここからは、私自身の経験を通して感じた4つのことを、一つずつお伝えします。
❶普段の乳房の状態を知ると、「いつもと違う」に気づきやすい
私が受診するきっかけになったのは、普段とは違う硬さや見た目の変化に気づいたことでした。
私がしこりに気づいた当時は、「自己検診」や「自己触診」という言葉がよく使われていました。
現在は、決められた方法でしこりを探すことだけを目的にするのではなく、普段から自分の乳房の状態を知り、変化に気づく「ブレスト・アウェアネス」という考え方があります。
大切なのは、しこりを必死に探すことではありません。
入浴や着替えなど、普段の生活の中で乳房を見たり、やさしく触れたりしながら、
「いつもと変わりはないかな」
と気にかけることです。

特別なことをするのではなく、日常の中で「いつもと違わないかな」と気にかけることから始められます。
普段の状態を知っていれば、形や皮膚、乳頭、触れたときの感覚などに変化があったとき、「いつもと何か違う」と気づきやすくなります。
私の場合も、いつもとは違う硬さに気づいたことが、受診への第一歩になりました。
ブレスト・アウェアネスの4つのポイント
- 自分の乳房の普段の状態を知る
- 乳房の変化に気をつける
- 変化に気づいたら、すぐ医師に相談する
- 40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける

乳房を意識する生活習慣と、適切な時期の乳がん検診。その両方が大切です。
ブレスト・アウェアネスは、「自分で確認していれば、乳がん検診を受けなくてもよい」という考え方ではありません。
普段から乳房の変化を気にかけることと、適切な時期に乳がん検診を受けることの両方が大切です。
❷乳がん検診でも、すべての乳がんが見つかるとは限らない
乳がんと診断されたあとも、私の中には疑問が残りました。
「毎年検診を受けていたのに、どうして見つからなかったのだろう」
担当医に尋ねると、乳腺が多い場合などは、マンモグラフィだけでは病変が分かりにくいことがあると説明されました。

「毎年検診を受けていたのに、どうして見つからなかったのだろう」診断後も、その疑問が残っていました。
マンモグラフィでは乳腺も病変も白く写るため、乳腺の多い部分に病変が重なると、見つけにくい場合があります。
ただし、私はこの経験だけから、自分が高濃度乳房だったと断定することはできません。
また、マンモグラフィに意味がないということでもありません。
私の場合は、しこり、ひきつれ、分泌物に気づいて乳腺外科を受診し、診療の中で受けた超音波検査でしこりが確認されました。
これは、症状に気づいたあと、医療機関で診断のための検査を受けたということです。
すべての人に、マンモグラフィと超音波検査の両方が必要とは限りません。
必要な検査は一人ひとり異なるため、気になる場合は医師へ相談してください。
乳がん検診を受けていても、すべての乳がんが必ず見つかるわけではありません。
だからといって、検診に意味がないわけでもありません。
定期的に乳がん検診を受けること。
そして、普段から乳房の状態を知り、変化があれば医療機関へ相談すること。
どちらも大切なのだと思います。
❸症状があるときは、次の検診を待たずに受診する
乳がん検診は、基本的に自覚症状のない人が定期的に受けるものです。
一方、しこり、乳房の皮膚のくぼみやひきつれ、乳頭からの分泌物などがある場合は、検診ではなく、医療機関で診療を受けます。
「先日の検診では異常がなかったから」
「次の検診まで、少し様子を見よう」
そう思ってしまうこともあるかもしれません。

検診で異常を指摘されていなくても、そのあとに気になる変化があれば医療機関へ相談します。
けれど、検診で異常を指摘されなかったことは、その後も変化が起こらないという意味ではありません。
症状がある場合は、次の検診を待たず、乳腺外科などへ相談してください。
この「検診」と「診療」の違いは、当時の私が知っておきたかったことの一つです。
乳がん検診と医療機関での診療の違い
- 乳がん検診
- 基本的に自覚症状のない人が、定期的に受けるものです。
- 医療機関での診療
- しこり、ひきつれ、乳頭からの分泌物など、気になる症状があるときに受ける診察や検査です。
-

「検診」と「症状があるときの受診」は目的が異なります。
❹異変を放置しなかったことが、診断と必要な治療につながった
私が告げられたのは、ステージ2Aのトリプルネガティブ乳がんでした。
診断を聞いたとき、私はすぐに現実として受け止められたわけではありませんでした。
毎年乳がん検診を受けていて、健康にも自信があったため、

「どうして私が」
という気持ちが強く、自分が乳がんになったという実感も、すぐには湧きませんでした。

毎年検診を受け、健康にも自信があった私は、すぐには乳がんになったことを実感できませんでした。
診断を受けたことで、私は必要な治療へ進むことができました。
抗がん剤治療を受けたあと、主治医と相談しながら乳房温存手術を選び、その後は放射線治療を受けました。
乳がんを早く見つければ、必ず乳房を温存できるわけではありません。
また、抗がん剤治療を受けずに済むと約束できるものでもありません。
治療方法は、がんの位置や広がり、性質、治療への反応、本人の希望などを確認しながら決めていきます。
私の場合も、しこりに気づいたことだけが、乳房温存手術を選べた理由ではありません。
それでも、あのとき乳房の異変を「気のせいかな」とそのままにせず、乳腺外科を受診したこと。
その受診が、診断と必要な治療につながったことは確かだと思っています。
乳がん検診としこりについて、よくある疑問
- Q.乳がん検診で異常を指摘されていなくても、しこりがあれば受診した方がよいですか?
- 検診結果にかかわらず、いつもと違う変化がある場合は、乳腺外科などの医療機関へ相談してください。
- Q.しこりがある場合は、乳がん検診を申し込めばよいですか?
- 自覚症状がある場合は、基本的に乳がん検診ではなく、医療機関で診療を受けます。
-

気になる症状があるときは、次の検診を待つのではなく医療機関へ相談します。
あの日の一歩が今につながっている|家族と自分のために伝えたいこと
乳がんと告げられたとき、最初に強く浮かんだのは、家族のことでした。
「どうして私が」
そんな気持ちと同時に、夫や子どもたちの顔が浮かびました。
そして、

「私がいなくなったら、家族はどうやって暮らしていくのだろう。大丈夫かな」
そんな不安でいっぱいになりました。
自分が乳がんになったことも怖かったのですが、それ以上に、家族のこれからが心配でした。
そして、その気持ちと同時に、

「絶対にがんに負けられない」
そう強く思いました。

最初に強く浮かんだのは家族のこと。そして「絶対にがんに負けられない」と思いました。
病気になると、つらいのは自分だけではありません。
そばにいる家族も心配し、ときには本人と同じように悩みます。
だから以前の私は、
「家族を悲しませないためにも、検診を受けてほしい」
と思っていました。
けれど今は、家族のためだけではなく、自分自身のためにも体を大切にしてほしいと思っています。
もちろん、検診を受けられなかったからといって、自分を責める必要はありません。
変化に気づくのが遅れた人を、周囲が責めることもできません。
乳房のしこりが、すべて乳がんというわけでもありません。
ただ、いつもとは違う変化があるのなら、
「こんなことで病院へ行ってもいいのかな」
と我慢せず、相談してほしいのです。
自分の体を気にかけることは、家族のためでもあり、自分自身のこれからを大切にすることでもあると思っています。
私は2014年3月12日に手術を受け、その後も治療と定期的な経過観察を続けました。
そして2024年1月、約10年間の経過観察を終え、主治医から「完治」と伝えてもらいました。
あの日、しこりを気のせいにしなかったこと。
怖くても病院へ行ったこと。
あのときの一歩が、今の私につながっているのだと思います。

怖くても病院へ行ったあの日の一歩が、今の私につながっています。
難しく考えなくても大丈夫です。
入浴や着替えのときに、
「いつもと変わりはないかな」
と、自分の乳房を気にかけることから始めてみてください。
そして、いつもとは違う変化に気づいたときは、そのままにしないでください。
私の経験が、誰かが自分の体を気にかけるきっかけになればうれしいです。
次回|治療を任せる先生に違和感を覚えたとき
乳がんと診断され、治療を受ける病院へ行けば、少しは安心できる。
私は、そう思っていました。
けれど、先生とのやり取りの中で、
「このまま治療を進めて、本当に大丈夫なのだろうか」
という新たな迷いが生まれました。

乳がんと診断されたあと、今度は「誰に治療を任せるのか」という新たな迷いが生まれました。
第30話では、主治医に違和感を覚えた私が、その後どのように考え、行動したのかを振り返ります。
第30話「治療を任せる先生に違和感を覚えたとき」
関連記事
第28話では、乳がん治療を始めてから最初の1年間にかかった約128万円の内訳や、高額療養費制度についてまとめています。
治療費や制度について知りたい方は、こちらも参考にしてください。
第28話「乳がん治療を始めてから1年間にかかった費用」


