乳がんの治療が始まる前、私は未来が見えない不安でいっぱいでした。
これから始まる治療はどうなるのか、今の私にできることはないのか。
この記事では、そんな押しつぶされそうな思いを抱えていた私が、治療中に「笑顔」を意識するようになったきっかけと、それがどのように心を少し支えてくれたのか、私の体験をお伝えします。

治療前の夜、資料を前にして不安と向き合っていました。
今、不安を抱えているあなたの心が、ほんの少しでも軽くなりますように。
治療の恐怖で押しつぶされそうだった日、主治医に投げかけた質問
トリプルネガティブ乳がんと告げられ、これから始まるのは抗がん剤治療でした。
主治医からは、「この抗がん剤が効く確率は約38%です」という、当時のデータに基づいた厳しい現実も聞いていました。
「生きたければ、この治療をやるしかない……!」
そう覚悟を決めたものの、頭の中は「本当に薬が効いてくれるのだろうか」「私にできることは、もう何もないのだろうか」という不安でいっぱいでした。
そんな思いが抑えきれなくなり、私は主治医にすがるような気持ちで質問したのです。

先生は薬で治療をしてくださいますが、私自身にできることは何かありますか?

診察室で、治療に向き合うための小さな手がかりを探していました。
「作り笑顔でもいいんですよ」その一言が心の緊張をゆるめてくれた
医学的なアドバイスが返ってくると思っていた私に、先生はにっこり笑って、思いもよらない言葉を口にしました。

毎日、笑顔でいてください
当時の私は、副作用への恐怖や不安でいっぱいで、とても笑えるような心境ではありませんでした。

えっ、笑顔……?
戸惑いながらも、私はもう一度先生に聞いてみました。

先生……作り笑顔でも、大丈夫ですか?
すると先生は、こう答えてくれたのです。

作り笑顔でもいいんですよ

あ、作り笑顔でもいいんだ……

無理に元気にならなくてもいいと、少しほっとできた瞬間でした。
本当に楽しくて笑えなくてもいい。
無理に元気なふりをしなくてもいい。
口角を少し上げるくらいなら、今の私にもできるかもしれない。
そう思えた瞬間、張り詰めていた心の糸が、ふっと少しゆるむのを感じました。

たった一言で、治療前の私の心に小さな余白が生まれました。
お風呂で口角を上げる習慣。消えない吐き気と、小さな内的変化
「抗がん剤と笑顔で、この試練を乗り越えよう!」
そう心に決めた私は、泣きたいときもつらいときも、お風呂の中で口角を少し上げて、大好きな歌を歌うことを毎日の習慣にしました。

無理のない形で、自分の気持ちを前に向けようとしていた頃です。
もちろん、笑顔を意識したからといって、抗がん剤の副作用が魔法のようにゼロになるわけではありません。
吐き気やだるさは、やっぱり辛かったです。
ただ、「つらい」「苦しい」という気持ちに、心がすべて引っ張られすぎないことで、症状の受け止め方が少し変わったように思います。
同じようにつらい日でも、「よし、なんとか今日も一歩ずつ頑張ろう」と思える、小さな力が湧いてくることがありました。
なぜ笑顔を意識したのか?当時の私を支えた「小さな安心材料」
当時の私は、笑いとストレス、免疫の関係について見聞きする中で、笑顔を治療効果としてではなく、不安に飲み込まれすぎないための小さな安心材料として受け止めていました。

治療と向き合う日々の中で、気持ちを整えるヒントを探していました。
もちろん、笑うだけで病気が良くなるわけではありません。
これが医学的にどう影響したのかは分かりませんが、当時の私にとっては、治療に向き合う心をほんの少し支えてくれる大切な工夫だったのです。
病気や不安に、私の「人生の主導権」は渡さない
あの日、不安で押しつぶされそうだった私に先生が言ってくれた「毎日、笑顔でいてください」という言葉。
治療を乗り越えた今なら、その本当の意味が分かる気がします。
それは、ただ「笑っていなさい」という意味ではなかったのだと思います。
病気や不安に、私の人生の主導権を渡さないこと。
そして、治療中であっても、自分の心がほっとできる時間を大切にすること。

朝の静かなひとときが、気持ちを整える助けになっていました。
先生は、そんな温かいエールを込めてくれていたのだと、今では思っています。
「笑顔なんて無理」な日があってもいい。ありのままの自分に丸ごとOKを
ここまで読んでくださって、「私にはそんな風に笑うなんて無理」「前向きになんてなれない」と苦しく感じている方がいたら、これだけは伝えたいです。

笑顔なんて作れない。そう思う日があっても、全然大丈夫です。

ひとりで抱えきれない日は、ただ気持ちの波が過ぎるのを待つ時間も必要でした。
無理に笑おうとしなくていいし、元気にならなきゃと自分を追い込む必要もありません。
「今日は笑えない日!」と、ありのままの自分に丸ごとOKを出してあげてくださいね。
大切なのは、無理に前向きになることではなく、自分が少しでもほっとできる時間を見つけることだと、私は思っています。

気持ちを奮い立たせることよりも、自分を静かに休ませる時間を大切にしたいと思っていました。
笑顔の習慣とともに私を支えてくれた、もうひとつの出会い
お風呂での作り笑顔は、自分自身で心を少し支えるための小さな習慣でした。
それでも、不安な時期に同じ経験をした方たちと話せたことは、また別の形で私の心を支えてくれました。

同じ立場の方と向き合って話せたことが、張りつめていた気持ちをやわらげてくれました。
患者会に参加し、「ひとりじゃない」と感じられたことは、私にとってのもう一つの大きな支えになったのです。その時の体験は、第10話にまとめています。
第10話はこちらから↓
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