【第28話】乳がん治療1年目の総額は約128万円。ウィッグなど、治療中の私を支えた「治療費以外の約37万円」

乳がん体験記
※この記事は、私が2013年にトリプルネガティブ乳がんと診断され、2014年にかけて治療を受けた当時の記録をもとに書いています。
※治療費や治療に伴う生活上の出費は、治療内容、入院日数、年齢、所得区分、生活環境などによって一人ひとり異なります。記載している金額は、あくまでも「私の場合の目安」としてお読みください。
※公的制度の対象条件や手続きは変更される場合があります。利用を検討するときは、加入している健康保険や勤務先、病院の相談窓口などで最新情報をご確認ください。

前回の第27話では、長期入院中の私の心を支えてくれた韓国ドラマについて書きました。

乳がんの治療中は、心や体のつらさだけでなく、お金への不安も少しずつ大きくなっていきました。

2013年6月に乳がんが見つかり、私は抗がん剤治療、手術、放射線治療を受けました。

当時の記録を振り返ってみると、治療を始めてから最初の1年間にかかったお金は、合計で約128万円でした。

今回は、乳がん治療1年目に実際にかかった費用と、治療費以外に必要だったもの、知っておきたい公的制度、そして私が保険にどのように助けられたのかを振り返ります。

乳がん治療1年目にかかった費用の総額は約128万円

私が当時の記録をもとに計算したところ、治療を始めてから最初の1年間にかかった費用は、概算で合計約128万円でした。

大きく分けると、次の2つです。

  • 医療機関などへ支払った費用:約91万円
  • 治療中の生活にかかった費用(治療費以外):約37万円
乳がん治療1年目にかかった約128万円を、医療機関などへの支払い約91万円と治療中の生活にかかった費用約37万円に分けて示した図

当時の記録を整理すると、病院で支払った費用だけでなく、治療を続ける生活にもまとまった出費がありました。

これらはあくまで私の一例であり、すべての乳がん患者さんに同じ金額がかかるわけではありません。

それでも、数字を整理してみると、治療そのものだけでなく、治療を続けるための生活にも費用が必要だったことが改めて分かりました。

医療機関などへ支払った費用は約91万円(差額ベッド代を含む)

約128万円のうち、医療機関などへ支払った費用は約91万円でした。

この金額には、公的医療保険が適用される治療費のほか、保険適用外の費用も含まれています。

治療ごとの正確な支払額までは記録に残っていませんが、約91万円には、主に次のような治療・検査・入院関連費が含まれています。

  • パクリタキセルによる抗がん剤治療
  • FEC療法4回
  • センチネルリンパ節生検
  • 乳房温存手術
  • 放射線治療25回
  • 血液検査、CT、MRIなどの検査
  • 診察や副作用を抑えるための薬
  • 入院中の差額ベッド代
パクリタキセル、FEC療法、乳房温存手術、放射線治療を順番に受ける女性を描いた治療経過のイラスト

抗がん剤から手術、放射線治療まで。約1年の間に、さまざまな治療や検査を受けました。

差額ベッド代だけで約13万5,000円

約91万円の中で、特にお伝えしておきたいのが「差額ベッド代」です。

私の場合、準個室を利用した期間が合計27日ありました。1日あたりの差額ベッド代は5,000円だったため、

5,000円×27日=13万5,000円

となりました。

1日5,000円の準個室を27日利用し、差額ベッド代が13万5,000円になったことを示す3コマ漫画

1日ごとの金額は小さく感じても、入院が続くとまとまった負担になります。

差額ベッド代は、公的医療保険の対象になりません。

入院前は、手術や抗がん剤にかかる金額ばかりを気にしていましたが、実際に入院してみると、ベッド代のように毎日積み重なっていく費用も、家計には大きな負担になることを知りました。

病室の種類を選べる場合は、事前に料金や入院予定日数を確認しておくと、費用の見通しを立てやすくなると思います。

私が驚いたのは、治療費以外にも約37万円かかったこと

治療前の私は、「病院で支払うお金」が治療費の中心だと思っていました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

でも、実際には、病院の外でも、治療を続けるためにさまざまなものが必要になりました。

当時の記録を集計すると、治療費以外の出費は合計で約37万円でした。

ただし、項目ごとの金額については概算で記録していたものもあり、すべての出費を正確に分けられる状態では残っていません。

ここでは、記録から確認できた主な項目を挙げます。

  • 医療用ウィッグ:約15万円
  • 保湿、口腔ケア、爪の保護などのケア用品
  • 食べやすい食品や栄養補助食品
  • 前開きパジャマなどの入院用品
  • 本や動画配信サービス
  • 通院時の電車代やタクシー代
  • そのほか、治療中の生活に必要だった少額の出費
乳がん治療中に必要だった医療用ウィッグ、ケア用品、入院用品、食品、スマートフォン、交通費などを並べたイラスト

病院の外でも、治療中の体や暮らしに合わせて少しずつ必要なものが増えていきました。

治療中の自分を支えるために必要だったお金

治療費以外の出費の中で最も大きかったのは、約15万円かかった医療用ウィッグです。

私にとってウィッグは、単に髪を隠すためのものではありませんでした。

脱毛した状態で外に出る不安を少し和らげ、治療中も自分らしさを保つために必要なものでした。

また、入院中に利用した動画配信サービスも、医療には直接関係のない出費です。

それでも、心が弱っていた私にとって、韓国ドラマを見て病気のことから離れられる時間は、大切な支えになりました。

医療用ウィッグをつけることで外出への不安が和らぎ、入院中は韓国ドラマを見る時間に心を支えられた女性の4コマ漫画

外見への不安を和らげてくれたもの、病気を忘れる時間をくれたもの。どちらも私の治療生活には大切な存在でした。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

治療に必要なお金は、薬や手術のためだけではありませんでした。

治療と向き合う私の生活や心を支えるためにも、お金が必要だったのだと思います。

その後9年間の検査・診察費は、初年度とは別に約7万2,000円

約128万円は、治療を始めてから最初の1年間にかかった金額です。

その後、大きな治療を終えてからは、年に一度の検査と診察を受けるようになりました。

私の場合、1回の検査と診察にかかった窓口での支払いは約8,000円でした。

そのため、9年間の合計は、

約8,000円×9年=約7万2,000円

となりました。

乳がん治療1年目の約128万円とは別に、その後9年間の検査と診察で約7万2,000円かかったことを示す時間軸

大きな治療が終わったあとも、私の場合は年に一度の通院と費用が続きました。

その間も、検査費や通院に伴う費用が発生しました。

初年度の約128万円とは別に、治療後も費用が続いたということを、当時の記録から改めて実感しています。

まず知っておきたい公的制度と相談窓口

治療費や生活費の負担が気になったときは、利用できる公的制度を確認しておくことも大切です。

対象となる制度や条件は、年齢、所得、働き方、加入している健康保険などによって異なります。

ここでは主な制度の概要を紹介しますが、実際に利用できるかどうかや、必要な手続きについては、加入している健康保険、勤務先、年金事務所、税務署、病院の相談窓口などでご確認ください。

高額療養費制度
1か月に支払った保険診療分の自己負担額が、年齢や所得区分に応じた上限額を超えた場合に、超えた分が支給される制度です。

差額ベッド代や入院中の食事代など、保険診療の対象外となる費用は含まれません。

傷病手当金
勤務先の健康保険に加入している本人が、業務外の病気やけがで仕事を休み、仕事に就けないなどの条件を満たした場合に支給される制度です。
医療費控除

1年間に支払った対象医療費が一定額を超えた場合、確定申告をすることで所得控除を受けられることがあります。
なお、医療費控除を計算する際は、保険金や高額療養費などで補てんされる金額を、その給付の対象となった医療費から差し引いて計算します。

障害年金
病気や治療の影響によって日常生活や仕事に支障があり、初診日、障害状態、保険料の納付状況などの要件を満たす場合に受給できることがあります。

病気の治療中に確認できる4つの公的制度を、会計窓口、休職中の会社員、確定申告書類、相談窓口で説明を受ける人物のイラストとともに示した図

利用できる制度は人によって異なるため、まずは仕組みを知り、必要に応じて相談窓口で確認することが大切です。

※「対象条件や手続きがあります。最新情報は各窓口で確認してください」

制度が分からないときは、病院の相談窓口へ

制度の名前を知っても、次のように分からないことがたくさんあると思います。

  • 私は対象になるの?
  • どの書類が必要なの?

そのようなときは、通院先の相談窓口や医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなどに相談できる場合があります。

病院の相談室で医療ソーシャルワーカーに公的制度や必要書類について相談する女性

制度を一から自分だけで調べるのがつらいとき、相談できる場所があることを知っているだけでも違います。

窓口の名称や利用方法は病院によって異なるため、まずは通院先で確認してみてください。

治療中は、制度を自分一人で調べることさえ負担になることがあります。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

分からないときは、病院で相談してもいいのだと知っておいてくださいね。

私は、がん保険と医療保険に助けられました

公的制度があっても、差額ベッド代や医療用ウィッグ、入院用品など、対象にならない出費もありました。

私の場合は、加入していた民間のがん保険と医療保険、そして、それまでの貯金に助けられました。

保険から給付金を受け取れたことで、次のように追い詰められずに済んだことは、私にとって大きな支えでした。

  • この先、家計は大丈夫だろうか
  • 治療が長くなったらどうしよう
治療費への不安を抱えながら保険内容を確認し、給付金によって経済的な負担が少し軽くなった女性の4コマ漫画

治療そのものとは別に、家計への心配が少し和らいだことも、当時の私には大きな支えでした。

保険が病気を治してくれたわけではありません。

それでも、治療と向き合う私の生活を、経済的な面から支えてくれたのだと思います。

保険は「入るべき」と一律には言えない

私は保険に助けられましたが、だからといって、すべての人に同じ保険が必要だとは思っていません。

必要な保障は、その人の年齢、家族構成、働き方、利用できる公的制度、貯金などによって異なります。

新しい保険を検討する前に、まずは今加入している保険の内容を確認することが大切です。

新しい保険を検討する前に、現在の保障、公的制度、貯金、働き方、家族構成を確認することを示す図

大切なのは、誰かと同じ保障を持つことではなく、自分の今の備えを一度整理してみることだと思います。

「今の保険で何が保障されるのか分からない」「一度、保障内容を整理しておきたい」と感じている方に向けて、私が保険に助けられた体験や、確認しておきたいポイントを別の記事にまとめています。

必要な範囲で参考にしてみてください。

私が保険に助けられた体験と、確認しておきたいポイントはこちら

さいごに|治療を続ける生活にもお金がかかりました

治療を始めてから最初の1年間にかかった費用は、約128万円でした。

その後、大きな治療を終えてからの9年間では、検査と診察の窓口負担が合計で約7万2,000円かかりました。

こうして期間を分けて振り返ると、病院で支払う治療費だけを考えておけばよいわけではなかったことが分かります。

治療を続けるための日々の暮らしや、自分の心を支えるためにも、お金が必要でした。

まずは、利用できる公的制度と、今加入している保険の内容を知ること。

そして、分からないことを一人で抱え込まないこと。

それだけでも、お金に対する漠然とした不安を、少し整理できるかもしれません。

今回、治療にかかったお金を整理しながら、乳がんが見つかった頃からのことも改めて振り返りました。そこで、もう一つ強く感じたことがあります。

それは、検診を受けることに加えて、普段から自分の乳房の状態を知り、その変化に気づくことの大切さです。

私は毎年、乳がん検診を受けていました。

それでも、乳がんが見つかるきっかけになったのは、自分で気づいたしこりや乳房の変化でした。

毎年乳がん検診を受けていた女性が、普段の生活の中で胸元の小さな変化に気づくまでを描いた4コマ漫画

定期的に検診を受けていた私にも、普段の自分を知っていたからこそ気づけた変化がありました。

毎年検診を受けていた私が、なぜ自分でしこりに気づけたのか。

次回・第29話では、私自身の経験を振り返りながら、乳がん検診と普段から乳房の変化に気を配ることについてお話しします。

29話はこちらから↓

 


この記事を書いた人

きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター

乳がんを経験し、経過観察を経てひとつの区切りを迎えました。

その後、義妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えてきた経験をもとに、患者と家族の視点で記事を書いています。

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