【第3話】乳がんのことを夫に伝えた日|家族に話す覚悟を決めた夜

乳がん体験記
※この記事は、私自身の乳がん体験をもとに書いています。症状や治療方針、感じ方には個人差があります。医療上の判断については、必ず主治医や医療機関にご相談ください。

はじめに|乳がんのことを、出張中の夫にどう伝えればいいのか

クリニックで乳がんの告知を受けた日、私は一人でした。

当時、夫は東京へ出張中。

診察室を出たあとも、頭の中では先生の言葉が何度も繰り返されていました。

「乳がんです」

開口一番に告げられたその言葉を受け止めるだけで精いっぱいだった私は、夫にどう伝えればいいのか、すぐには考えられませんでした。

乳がんの告知を受けたあと、病院を出た外で書類を持ったまま立ち尽くす女性のイラスト

書類を握りしめたまま、何を考えればいいのかもわかりませんでした。

乳がんと診断されたあの日、病院を出てからもしばらくは現実感がなく、頭に浮かぶのは不安ばかりでした。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

伝えなければいけない。でも、伝えたら夫を傷つけてしまうかもしれない。

そう思うと、電話をかけることができませんでした。

「乳がんだった」と伝えたら、夫はどんな反応をするのだろう。

仕事中に電話をしてもいいのだろうか。出張先で一人、つらい思いをさせてしまうのではないか。

そんなことばかりが頭を巡り、なかなかスマートフォンを手に取れずにいました。

この夜の出来事が、私たち夫婦がこれから病気に向き合っていくための、最初のステップとなりました。

「がん」という言葉が、夫婦に与えたショック

ためらっているうちに、夫の方から電話がかかってきました。

夜の自宅で、夫からの着信が表示されたスマートフォンを見つめ、緊張した表情を浮かべる女性のイラスト

自分から言えないまま、夫からの着信が画面に表示されました。

夫

検査結果、どうやった?

その言葉を聞いた瞬間、もう隠すことはできないと思いました。

私は、できるだけ落ち着いた声で伝えようと、一呼吸置いてから答えました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

乳がんだった

そう告げると、電話の向こうから夫のすすり泣く声が聞こえてきました。

自宅で電話をする女性と、出張先で電話を受けながら涙をこらえる夫を描いたイラスト

離れた場所にいても、同じ現実を受け止めていた夜でした。

その声を聞いた瞬間、胸が締めつけられるようでした。

病気になったのは私なのに、夫をこんなにも悲しませてしまった。

そのことがたまらなくつらかったのを覚えています。

当時の私たちは、乳がんについて詳しい知識をほとんど持っていませんでした。

「がん」という言葉を聞いただけで、どうしても命に関わる病気を想像してしまう。

それは本当に大きな恐怖でした。

夫は私以上に大きなショックを受けていたように思います。

私は自分の不安を抱えながらも、「夫に元気になってもらわなきゃ」「私がしっかりしなきゃ」と必死に自分に言い聞かせていました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

けれど本当は、私自身も怖くてたまらなかったのです。

少しでも知識を得たくて、乳がん専門医が書いた本も購入しました。

自宅の机で乳がんに関する本を前にしながらも、すぐには開けずに見つめている女性のイラスト

本を前にしても、知る勇気を持つには少し時間が必要でした。

それでも、告知を受けたばかりの心は追いつかず、しばらくはページを開く余裕さえありませんでした。

知ることは大切ですが、すぐに前向きになれなくてもいい。

あの頃の張り詰めていた自分を振り返ると、今はそう思えます。

夫に伝えて気づいた、家族に支えてもらうことの意味

きゃんばぁば
きゃんばぁば

乳がんと診断されたことを家族に伝えるのは、とても勇気がいることでした。

特に夫には、これからの通院や治療、家事、子どもたちのことなど、生活のすべてに関わってもらうことになります。

私ひとりでは抱えきれないことが、これから増えていくかもしれない。そう感じました。

乳がんを夫に伝えたあと、自宅のテーブルでこれからの通院や生活について話し合う夫婦のイラスト

夫と話しながら、これからのことを少しずつ考え始めました。

そう考えると、夫に伝えることは、これから夫婦で向き合っていくための、大切な一歩だったのだと思います。

家族に伝えることは、単に病名を知らせることではなく、これから一緒に向き合っていくための最初の手がかりだったのだと、今になって気づかされます。

夫もきっと、どう声をかければいいのかわからなかったと思います。

けれど、告知直後の私にとって救いだったのは、無理に明るい言葉をかけてもらうことではありませんでした。

ただ話を聞いてくれること、そばにいてくれること、いつも通りに接してくれること。

夜のリビングで、不安そうにうつむく女性の隣に夫が静かに寄り添って座っているイラスト

何かを言ってもらうより、ただそばにいてくれることが救いでした。

それだけで、少し息ができるような気がしました。

子どもたちに伝えるべきか、夫婦で話し合った夜

夫に乳がんを伝えたその夜、私たちは子どもたちにどう話すかを話し合いました。

その場ですぐに答えが出るような問題ではありませんでした。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「子どもたちに心配をかけたくない」という思いがある一方で、隠し続けることはできないという現実もありました。

治療が始まれば生活の変化に気づくはずですし、私の場合、子どもたちは16歳以上だったため、何も知らせないよりはきちんと話した方がいいのではないかと考えました。

ただ、自分たちの心がまだ整理できていない状態だったため、まずはS病院で詳しい検査結果が出てから話そうと夫婦で決めました。

話す方向性は固まりましたが、実際に「いつ、どのように切り出すか」は、これからの私たち夫婦にとって新たな向き合うべき課題となりました。

子どもたちに乳がんをどう伝えるか、夫婦が話し合いながら、子どもたちに話す場面を想像している4コマ漫画

子どもたちの顔を思い浮かべながら、いつ、どう伝えるかを夫婦で考えました。

そのときに、子どもに伝えるうえで私たちが意識しようと話し合ったポイントは、次のような内容です。

伝えるときに大切だと思ったこと
ポイント 内容
落ち着いて話せる時間を選ぶ 忙しい時間や外出前ではなく、家族でゆっくり話せる時間を選ぶ
正直に伝える 「乳がんと診断されたこと」「治療が必要なこと」を、年齢に合わせて話す
わかっていることだけ伝える まだ決まっていないことを無理に説明しすぎない
生活の変化も伝える 通院や治療で、家の中の役割が少し変わるかもしれないことを話す
不安を否定しない 子どもが驚いたり泣いたりしても、気持ちを受け止める

大切なのは、すべてを完璧に話すことではないと思います。

「今わかっていること」「これから確認していくこと」「家族で一緒に進みたいこと」を、できるだけ落ち着いて伝えることだと感じています。

ただし、子どもの年齢や性格、ご家庭の状況によってふさわしいタイミングや言葉選びは異なります。

焦って一度にすべてを解決しようとしなくても大丈夫です。

夜の自宅で、閉じたメモ帳とお茶を前に、静かに目を閉じてひと息つく女性のイラスト

答えを急がず、心を少し休ませる時間も必要でした。

さいごに|伝え方に正解はない。だからこそ一歩ずつ

乳がんを家族に伝えることは、決して簡単ではありませんでした。

夫を泣かせてしまった電話、子どもたちへの伝え方に頭を悩ませた夜、これからの変化への恐怖。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

あの時間のことは、今でも忘れることができません。

けれど、あの夜をきっかけに、不安をすべて一人で抱え込まなくてもいいのだと、少しだけ思えるようになりました。

家族に伝えたからといって、病気の不安そのものが消えるわけではありませんが、同じ方向を向いて歩き出すための覚悟が決まった夜でもありました。

無理に強くならなくても、すぐに前向きになれなくてもいいのだと思います。

泣きながらでも、迷いながらでも、一歩ずつ進んでいければ大丈夫です。

家族に話すタイミングも、言葉の選び方も、家庭の状況によって違っていい。

もし不安が強くて一歩を踏み出せないときは、主治医や看護師さん、あるいはがん相談支援センターなど、専門の医療者に相談しながら、少しずつご自身の言葉を探していってください。

夫に伝えたことで、私は少しだけ「一人ではない」と思えました。

夜のリビングを少し離れた場所から見た、書類と湯のみが残る静かな部屋のイラスト

その夜から、家族として向き合う時間が静かに始まっていました。

けれど、家族として向き合う時間は、まだ始まったばかりでした。

家族に伝えると決めたあとも、すぐにすべてが整理できたわけではありません。

その後、私たちが次に向き合ったことを、第4話でお話しします。↓


この記事を書いた人きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター乳がんを経験し完治。妹の膵がんや夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに、「患者と家族の視点」で記事を書いています。

👉 詳しいプロフィールはこちら

🔗関連リンクInstagram日々の想いや、乳がん経験・家族の闘病についてInstagramでも発信しています。

👉 @cansan_bar2

タイトルとURLをコピーしました