【第30話】「この先生で大丈夫?」乳がん治療前に迷った私。自分が納得できる主治医を選ぶまで

乳がん体験記
※この記事は、私が2013年に乳がんと診断された当時の体験をもとに書いています。
セカンドオピニオンの受け方や必要な書類などは医療機関によって異なります。
また、乳がんの治療方針は、がんのタイプや進行度、体の状態などによって異なります。
治療について迷いや不安がある場合は、現在の担当医や医療者、がん相談支援センターなどに相談してください。

「今ここで決めるの?」最初の診察で抱いた戸惑い

乳がんと診断された頃、紹介された病院でそのまま治療を受けるつもりでいました。

がんと告げられたばかりで、どこの病院で、誰に治療をお願いするのがよいのか、自分でもよく分かっていなかったからです。

けれど、すべての検査結果がそろい、これからの治療について話を聞くために診察室へ入った日のことでした。

先生から、「治療ですが、手術前に抗がん剤をしますか。それとも手術後にしますか」と尋ねられました。

ひどく戸惑いました。

もちろん、十分な説明を受けたうえで、治療の選択肢について患者自身が考えることは大切です。

でも当時は、それぞれの治療にどのような違いがあるのか、自分の場合はなぜその選択肢があるのかを、もう少し詳しく聞いてから考えたいと思っていました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「今ここで、私が決めるの?」

そんな不安が押し寄せてきたことを覚えています。

乳がん治療について医師から選択肢を示され、診察室で戸惑う50代の女性

治療方針を自分で決めることに戸惑い、「もっと詳しく話を聞いてから考えたい」と感じた最初の診察。

決して、その先生が悪いと思ったわけではありません。

ただ、これから長く続く治療を考えたとき、

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「この先生に自分の不安をきちんと話せるだろうか」

「納得しながら一緒に治療を受けていけるだろうか」という迷いが心に残りました。

立ち止まって見つけた「セカンドオピニオン」という選択肢

このまま治療に進んでいいのだろうかと悩み、調べていく中で、「セカンドオピニオン」という言葉を知りました。

現在の担当医とは別の医師に、診断や治療方針について意見を聞く方法です。

「ほかの先生の意見を聞いてもいいんだ」と知っただけで、少し気持ちが楽になりました。

自宅のパソコンでセカンドオピニオンについて調べ、少し安心する乳がん治療前の女性

別の医師の意見を聞いてから考える方法もあると知り、少しだけ心に余裕が生まれました。

今すぐ転院を決めなければいけないわけではない。

まずは別の先生の話を聞いてから、今後のことを考えることもできる。

自分が納得して治療を始めるために、別の医師の意見を聞いてみることにしました。

ウィッグ探しの美容室で耳にした、M先生の名前

セカンドオピニオンを受けようと決めたものの、どこへ行けばいいのか迷っていたとき、思いがけない場所で一つの情報を耳にしました。

抗がん剤治療に備えてウィッグを探しに行った美容室でのことです。

そこで、ある病院のM先生のことを教えてもらいました。

「M先生に一度相談してみたら?」

まさかウィッグを探しに行った先で、その後の治療につながる先生の名前を聞くとは思ってもいませんでした。

ウィッグを探しに訪れた美容室で乳がんを診療する医師の情報を聞き、自宅で調べる女性

ウィッグを探しに訪れた美容室で聞いた一人の先生の名前が、主治医選びを考えるきっかけになりました。

自宅に戻ってから、その病院やM先生について自分でも調べました。

乳がんを専門に診療している先生だと分かり、「一度、この先生の話を聞いてみたい」と思うようになりました。

誰かにすすめられただけで決めたのではありません。

自分でも納得したうえで、セカンドオピニオンを受けることにしました。

「この先生にお願いしたい」私が新しい主治医を“選んだ”決め手

予約した日に病院を訪れ、診察室へ入りました。

そこにいたのが、穏やかな印象のM先生でした。

先生は資料に丁寧に目を通し、これからの検査や治療について話してくださいました。

セカンドオピニオンを受けるまでに、私の乳がんがトリプルネガティブ乳がんであることは分かっていました。

そのため、M先生を受診する前に、トリプルネガティブ乳がんや術前抗がん剤治療について自分でも調べていました。

診察では、私の場合は術前に抗がん剤治療を行う方針について説明がありました。

ちょうど詳しく聞いてみたいと思っていた内容だったため、先生の話を一つひとつ確認しながら聞くことができました。

前の診察との大きな違いは、分からないことを質問しやすく、それぞれの選択肢の理由がすんなりと理解できたことです。

話を聞きながら、「こういうふうに治療について話を聞きたかったんだ」と、胸のつかえが取れていくのを感じました。

そして最後に、先生から

医師
医師

「一緒に頑張りましょう」

と声をかけてもらいました。

その言葉を聞いたとき、ずっと張りつめていた気持ちがふっとほどけたのを覚えています。

セカンドオピニオン先で医師から丁寧な説明を受け、安心して質問する乳がん治療前の女性

分からないことを質問でき、治療方針の理由にも納得できた診察。「この先生と治療を進めたい」と思えた瞬間でした。

出会いは偶然でしたが、最終的にM先生を自分の主治医として選んだのは、私自身の決断でした。

セカンドオピニオンを受けた後、私はM先生の病院へ転院しました。

必要な検査を受け、2013年8月から2014年2月まで、術前抗がん剤治療を受けました。

迷っている方へ|セカンドオピニオンの基本手順とQ&A

ここまでは私自身の体験をお話ししてきましたが、次に、当時の経験をもとにセカンドオピニオン受診までの基本的な流れをまとめます。

紹介状や検査資料、質問メモを準備してセカンドオピニオン受診に備える女性

受診方法や必要書類を確認し、聞きたいことを整理しておくと、限られた相談時間を活用しやすくなります。

受診までの基本的な流れ

医療機関によって異なりますが、希望する病院の案内も確認しつつ、一般的には以下のような手順で進みます。

  • セカンドオピニオンを受けたい医療機関を探す
  • 受診方法や予約方法、費用、必要書類を確認する
  • 現在の担当医にセカンドオピニオンを受けたいことを伝える
  • 紹介状(診療情報提供書)や検査結果、画像データなどを準備してもらう
  • 聞きたいことを整理して受診する
セカンドオピニオンを受ける医療機関探しから受診までの5つの基本的な流れ

セカンドオピニオンの受診方法や必要書類は医療機関によって異なるため、希望する病院の案内を事前に確認します。

経験からお答えするQ&A

Q. 今の先生に「セカンドオピニオンを受けたい」と言い出しづらいときは?

A. 私も最初は言い出しにくさを感じました。けれど、自分が納得して治療を受けるために別の意見を聞くことは、決して悪いことではありません。

どうしても担当医に直接伝えることが難しい場合は、看護師や医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターのスタッフなどに相談してみるのも一つの方法です。

Q. セカンドオピニオンを受けたら、必ず転院することになる?

A. セカンドオピニオンを受けたからといって、必ず転院するわけではありません。別の医師から聞いた意見を持ち帰り、現在の担当医と今後の治療方針をあらためて話し合うのが基本です。

セカンドオピニオン後に現在の担当医と相談する場合と転院を検討する場合を示した図

別の医師の意見を聞いたあと、元の担当医と相談を続けることも、状況に応じて転院を検討することもあります。

私の場合は、セカンドオピニオンを受けた後、M先生の病院へ転院しました。
転院を希望する場合は、受け入れの可否や必要な手続きを確認しながら進めることになります。

Q. 受診には何を持っていけばいい?

A. 一般的には、現在の担当医に作成してもらう紹介状(診療情報提供書)、これまでの検査結果、CTやMRIなどの画像データなどを準備します。

ただし、必要な書類や受診にかかる費用、相談時間は医療機関によって異なります。希望する病院の公式サイトを見たり、窓口へ問い合わせたりして、予約前に確認してください。

なお、セカンドオピニオンの基本的な考え方や相談窓口については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」にも詳しい案内があります。


国立がん研究センター がん情報サービス「セカンドオピニオン」

主治医が決まった安堵と、次に浮かんだ「治療費」への不安

乳がんと診断された当初は、治療を受ける病院や先生を必死に探していました。

当時の私は、乳がん治療を専門とする先生をどのように探せばよいのか分からず、治療実績のある先生を探したいと考えていました。

けれど、いま振り返って大切だったと思うのは、分からないことを遠慮せずに質問でき、自分の不安を言葉にでき、説明の理由を理解したうえで、自分自身が納得して治療に進めることでした。

あのときは迷いもありましたが、自分の気持ちを信じて行動しました。

その結果、「この先生と治療を進めたい」と思える主治医に出会えました。

治療に向かう覚悟ができ、ほっと安心したのもつかの間でした。

いざ本格的な治療が始まることを考えると、「治療中に仕事ができなくなったらどうしよう」という不安が出てきました。

当時、長男は大学生、長女は専門学生、次男は高校生。

子どもたちにお金がかかる時期でもありました。

「これから治療に、いったいいくらかかるのだろう」
「仕事ができなくなっても、生活していけるだろうか」
「入っている保険で、どこまで備えられるのだろう」

乳がん治療を任せる主治医が決まったあと、家計簿や保険書類を前に治療費を心配する女性

主治医が決まり、次に現実味を帯びてきたのは、治療中の仕事と家計のことでした。

主治医が決まり、治療への迷いが少し落ち着いたからこそ、今度は治療費や生活費という現実的な心配が浮かび上がってきたのです。

そして実際に治療が始まってから、私は加入していた保険に本当に助けられました。

次回は、乳がん治療にかかったお金や、当時加入していた保険にどのように助けられたのかを、私自身の経験をもとに振り返ります。

31話はこちらから↓

この記事を書いた人きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター乳がんを経験し、経過観察を経てひとつの区切りを迎えました。

その後、義妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えてきた経験をもとに、患者と家族の視点で記事を書いています。

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