私は2013年にトリプルネガティブ乳がんと告知され、術前抗がん剤、手術、放射線治療を受けました。
術前抗がん剤として最初に受けたのが、パクリタキセル治療です。
パクリタキセル治療中の副作用や、週1回・計12回の治療の流れについては、第11話で詳しく書きました。
今回は少し視点を変えて、治療中にずっと抱えていた「本当に効いているのかな?」という見えない効果への不安と、主治医の言葉からそれをどう受け止めたのかをお話しします。
また、記事の後半では、私が実際に支払ったパクリタキセル治療の費用や、公的医療保険ではカバーしきれなかった生活面の出費についても、私自身の体験として書いていきます。

治療のことも、お金のことも、頭の中から離れない時期がありました。
パクリタキセルは効いているの?約2mmの変化に抱いた不安
治療を受けていた3か月間、毎週の通院をこなしながらも、私の心の中はずっと不安でした。

本当に効いているのかな
その答えが見えないまま、日々を過ごしていたように思います。
抗がん剤治療を始める前、私はどこかで大きな期待をしていました。
「抗がん剤を受ければ、目に見えてがんが小さくなっていくはず」
「治療を重ねるたびに、良くなっている実感が持てるのではないか」
そんなふうに思っていたのです。
でも実際には、毎週治療を受けても、体の中で何が起きているのかは自分ではわかりません。
右胸に触れてみても、はっきりと小さくなったという実感はありませんでした。
治療の後半になると、硬くて動かなかったしこりが、少しだけ柔らかくなったようには感じました。
途中の6回目のエコー検査でも、主治医から「腫瘍の厚みが少し薄くなっている」と言われました。
ただ、私の記憶では、それは約2mmほどの変化でした。
私が想像していたのは、「しこりがどんどん小さくなっていく」ような、もっとはっきりした変化でした。
だから、約2mmという数字を聞いても、素直に喜ぶというより、少し戸惑ったことを覚えています。

こんなに頑張って副作用にも耐えているのに、あまり変わっていないの?
そう思うと、不安で胸がいっぱいになりました。

小さな変化をどう受け止めればいいのか、当時の私は迷っていました。
治療は進んでいる。
でも、効いているのかどうかは自分ではわからない。
この「わからない時間」が、私にはとてもつらかったです。
主治医に聞いた効果の見方「大きくなっていないことにも意味がある」
不安になった私は、診察のときに主治医へ思いきって聞きました。

パクリタキセルは、あまり効いていないんですか?
自分で聞いておきながら、答えを聞くのが怖かったことを覚えています。
すると主治医は、落ち着いた口調でこう説明してくれました。

がんが大きくなっていなければ、効果があると判断します。

結果だけを見るのではなく、治療の意味を考え直すきっかけになりました。
私はその言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けました。
それまでの私は、抗がん剤の効果というと、「目に見えて小さくなること」ばかりを考えていました。
でも主治医の説明を聞いて、少し見方が変わりました。
「小さくなること」だけが効果ではない。
「大きくなっていないこと」も、治療の意味として見ていくのだ。
そう知ったことで、不安な気持ちが少し落ち着きました。
もちろん、治療効果には個人差があります。
私の場合も、劇的に小さくなったわけではありません。
それでも、主治医の説明を聞いたことで、「全く意味がなかったわけではない」と思えるようになりました。
パクリタキセル12回を終えて。劇的な変化はなくても受け止めた結果
パクリタキセル12回の投与がすべて終わり、治療後の結果を聞く日が来ました。
この日は朝からなんとなく気分が沈んでいて、病院へ向かう足取りも重く感じました。
待合室で過ごす時間も、とても長く感じました。
こんなに時間が長く感じたのは、がんの告知を受けた日以来だったかもしれません。
診察室に入り、改めてエコーでがんの状態を確認してもらいました。
先生は画面を見ながら、こう言いました。

サイズは大きく変わっていませんが、やはり厚みは薄い状態を維持していますね。
頭では、「大きくなっていないことにも意味がある」とわかっていました。
それでも、いざ「大きく変わっていない」と言われると、気持ちはすぐには追いつきませんでした。
期待していたのは、やっぱりもっとはっきりした「小さくなっています」という言葉だったからです。
私は思いきって、もう一度聞きました。

それは、パクリタキセルがあまり効いていないということでしょうか?
すると先生は優しく、こう声をかけてくれました。

次の抗がん剤、FECを終えたあとに判定していきましょう。今は焦らず、一緒に頑張りましょう。

期待したほどの変化ではなくても、治療を終えたこと自体が次の一歩につながっていきました。
その言葉を聞いても、不安がすぐに消えたわけではありません。
でも、主治医からは、抗がん剤の目的は目に見えるしこりだけではないとも説明を受けていました。
画像には写らないほど小さながん細胞に働きかけることも、治療の大切な目的のひとつだと聞いていました。

目に見える変化は少なくても、治療に意味がなかったわけではない
私はその言葉を、自分に言い聞かせるようにしていました。
思っていたほどの変化はありませんでした。
それでも、ここまで体の状態を見てもらいながら、12回を終えられたこと。
次の治療へつなげられたこと。
それは、私にとって大きな一区切りでした。
治療費は約18万円。公的保険ではカバーしきれなかった生活の出費
パクリタキセルの治療が進むにつれて、体の不安だけでなく、暮らしを守るお金の不安も現実になっていきました。
ここからは、私が実際にパクリタキセル治療で支払った費用について書いていきます。
※私がパクリタキセル治療を受けたのは2013年です。
治療費は、薬の量、体重や体表面積、検査内容、病院、治療スケジュール、他の薬との組み合わせなどによって変わります。
あくまで、私の場合の体験としてお読みください。

私の場合、パクリタキセル治療の会計は、1回あたり約1万円前後でした。
検査がある日もあり、パクリタキセル治療に関わる費用は、トータルで約18万円ほどかかりました。
パクリタキセル治療にかかる費用や、高額療養費制度を利用した場合の自己負担額は、年齢や所得区分、加入している医療保険、同じ月に受けた検査や治療内容などによって変わります。
そのため、同じ治療を受けた場合でも、実際に支払う金額は人によって異なります。
「抗がん剤そのものの費用だけではなく、検査や通院も含めると、思っていた以上にお金がかかるんだ」
そう感じたことを覚えています。

病院で支払う金額を重ねていくうちに、治療と家計は切り離せないものだと感じました。
もちろん、公的医療保険や高額療養費制度によって、医療費の負担は軽減される場合があります。
私も、公的な制度に助けられた部分はありました。
でも、がん治療で必要になるお金は、病院の窓口で支払う医療費だけではありませんでした。
差額ベッド代・交通費・ウィッグ代など、治療費以外に必要だったお金
私が治療中に実際に負担を感じたのは、次のような費用です。
- 差額ベッド代
- 通院時の交通費
- 医療用ウィッグ代
- 治療中に必要になった下着やスキンケア用品
- 仕事を休んだことによる収入の減少
- 家族の付き添いや生活面で増えた費用
病気になる前は、治療費といえば「病院で支払うお金」だけを想像していました。
でも実際には、通院のための交通費、体調に合わせて必要になったもの、脱毛に備えて用意したウィッグ、入院時の差額ベッド代など、治療を続けるための生活費も必要でした。
こうしたものは、実際に治療が始まってから、ひとつひとつ現実として見えてきました。

治療費だけを考えていたけれど、暮らしを守るお金も必要なんだ。
これは、私が治療を経験して初めて強く感じたことです。

治療を続けるためには、病院の外で必要になるものも少しずつ増えていきました。
私の場合、民間保険が治療中の支えになった体験
私は、乳がんがわかる前から民間の保険に加入していました。
治療中に特に助かったのは、診断給付金と通院保障でした。
診断給付金は、がんと診断されたときに、契約内容に応じてまとまったお金を受け取れる保障です。
通院保障は、通院で治療を受けるときの負担を支えてくれる保障です。
私の場合、抗がん剤治療も放射線治療も通院が多かったので、通院に対する保障があったことはとても心強かったです。
また、医療用ウィッグや差額ベッド代など、治療に伴って必要になった費用の一部を補えたことも、気持ちの支えになりました。

お金の不安が少し減るだけで、治療に向き合う気持ちはこんなに違うんだ
そう感じました。

保障内容を確認できたことで、治療中の不安が少しだけ軽くなりました。
もちろん、保険に入っていればすべて安心というわけではありません。
保障内容は人によって違いますし、すべての費用が対象になるわけでもありません。
また、病気がわかってからでは、新たに加入できる保険や保障内容に制限が出る場合もあります。
私にとって民間保険は、治療そのものを楽にしてくれるものではありませんでした。
でも、お金の不安を少し減らし、治療を続けるための支えになってくれました。
すでに保険に入っている方は、治療が始まる前や体調が落ち着いているときに、保障内容を一度確認しておくと安心につながるかもしれません。
ただし、必要な保障や保険に対する考え方は、人によって違います。
最終的には、ご自身の状況に合わせて確認していただければと思います。
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▼ がん保険に入っていて助かった私の体験
▼ がん保険と医療保険の違いについて
パクリタキセルを乗り越え、次のFEC治療へ
パクリタキセル治療は、私にとって「ようやくがんと闘える」と思えた治療の始まりでした。
でも実際には、治療が始まったからといって、不安がなくなるわけではありませんでした。
副作用への不安。
治療効果への不安。
お金への不安。
ひとつひとつに戸惑いながら、毎週病院に通い、血液検査の結果を待ち、治療を受ける日々でした。
そして、思っていたほどがんが小さくならなかったことにも、不安を感じました。
それでも、主治医の説明を聞き、
「大きくなっていないことにも意味がある」
「目に見えないがん細胞に働きかけている可能性がある」
そう考えることで、私は次の治療へ進む気持ちを持つことができました。
パクリタキセルが終わっても、治療はまだ続きます。
次は、FEC治療です。
また違う副作用や不安と向き合うことになりました。
それでも、ここまでひとつ乗り越えた自分を、少しだけ認めてあげたいと思いました。

不安を抱えたままでも、ひとつ治療を終えた自分を少しだけ認めたいと思いました。
次回は、パクリタキセルのあとに受けたFEC治療について書いていきます。
第15話はこちらから↓
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