乳がんの手術を前にしたとき、私は「温存手術にするか」「全摘手術にするか」で何度も悩みました。
約6か月にわたる術前抗がん剤治療を終え、主治医から

「画像上はがんが見えない状態になっています」
と説明を受けたときは、本当にうれしかったです。

うれしい知らせを聞いたあとも、心の中には迷いと不安が静かに残っていました。
それでも、手術が近づくにつれて「本当に温存で大丈夫なのだろうか」という不安が、何度も心の中に浮かんできました。
この記事では、私が主治医と話し合いながら、どのように手術方法を決めていったのかをお話しします。
同じように手術方法で迷っている方にとって、「不安に思ってもいい」「何度確認してもいい」と思えるきっかけになればうれしいです。
1. 画像上がんが見えなくなっても消えなかった、「本当に温存で大丈夫?」という不安
抗がん剤治療が効いて、画像上がんが見えなくなったとはいえ、手術で切除した組織を病理検査で確認するまでは最終的な結果はわかりません。
主治医からは

「現在の状態なら、温存手術で対応できますよ」
と言っていただいたものの、私の心はすぐには決まりませんでした。
私の乳がんは、トリプルネガティブ乳がんでした。
当時の私は、

「もし再発したらどうしよう」
という恐怖をとても強く抱えていたのです。
だからこそ、温存できると聞いても「乳房を残して、もしがんを取り残してしまったらどうしよう」「全摘したほうが、あとで安心できるのではないか」という思いが何度も頭をよぎりました。
温存を選ぶことは、体のことだけでなく、これから先の不安とどう向き合っていくかにも関わる大きな選択でした。
だからこそ、「もし再発したら、温存を選んだことを後悔するのではないか」と、簡単には答えを出せなかったのです。

安心したはずなのに、ひとりになると不安が戻ってくることもありました。
2. 「本当に温存で大丈夫ですか?」主治医に何度も確認した日々
不安が消えなかった私は、診察のたびに

「本当に温存でも大丈夫ですか?」
と同じような質問を繰り返していました。
主治医は、私が不安を口にするたびに嫌な顔ひとつせず、丁寧に説明してくださいました。
私が特に不安に思っていたのは「温存にすると、がんを取り残してしまうのではないか」ということです。
切除する範囲はどのくらいなのか、温存を選んだ場合に放射線治療が必要になるのか、全摘を選んだ場合と何が違うのか。
私は、不安に思ったことを一つずつ主治医に確認していきました。

不安を言葉にして聞くことで、少しずつ気持ちが整理されていきました。
主治医は

「現在の画像所見や抗がん剤治療の効果から、温存手術で十分対応できます」
「必要な範囲をきちんと切除して、その後に放射線治療を行います」と、私の状態に合わせた理由をしっかり伝えてくれました。
それでも不安になってまた次の診察で聞いてしまう私に、先生は根気よく向き合ってくださったのです。
命に関わる治療の選択ですから、一度聞いただけで納得できなくても当然だったのだと今は思います。
大切なのは正解探しではなく、我慢せずに何度でも確認し、少しずつ自分自身が納得していくことでした。
温存手術と全摘手術の違い(私が説明を受けて理解したこと)
ここで、私が主治医から説明を受けて理解した、ふたつの手術の違いを簡単に整理しておきます。
- 乳房温存手術:がんのある部分とその周囲を部分的に切除し、できるだけ乳房の形を残す手術です。多くの場合、手術後に放射線治療を組み合わせて行います。
- 乳房全切除術(全摘手術):乳房全体を切除する手術です。がんの広がりや場所などによって、全摘が必要になる場合があります。

手術方法の違いを知ることも、納得して選ぶための大切な準備でした。
これはあくまで一般的な違いであり、最適な方法は人それぞれ異なります。
ご自身の状態に合った手術方法はどちらか、必ず主治医と確認しながら決めていくことが何よりも大切です。
3. 手術前日にもう一度エコーで。担当医の言葉に救われた瞬間
主治医と相談して「温存でいこう」と決めたあとも、心の中の迷いが完全にゼロになったわけではありませんでした。
手術前日。
病室で過ごしながら、私はまた

「明日、本当に温存手術でいいのかな」
「全摘にしておいたほうがよかったのではないかな」
と不安になっていました。
そんな私の様子を察してか、担当医の先生が「もう一度、エコーで確認しておきましょうね」と声をかけてくださいました。
そして、超音波検査の画面を見ながら、先生は落ち着いた声でこう言ってくださったのです。
「大丈夫ですよ。安心して手術に臨みましょう」その一言を聞いたとき、張りつめていた心がふっと緩んだのを覚えています。

もう一度確認してもらえたことで、張りつめていた気持ちが少しほどけました。
不安を隠さずに言葉にして伝えていたからこそ、先生がもう一度向き合って、大きな安心をくれたのだと思います。
4. いよいよ手術当日。不安の中で聞こえた声と、無事に終わった安堵
2013年3月12日、いよいよ手術の日を迎えました。
病室で手術着に着替え、弾性ストッキングを履きながら、心の中では

「どうか無事に終わりますように」
「ちゃんと取りきれますように」
と何度も祈っていました。
手術室へ向かうまでの時間は、とても長く感じられました。
手術室に入ると、医療スタッフの方々が穏やかに声をかけてくださり、麻酔がかかる直前、どなたかが言ってくださった「大丈夫ですよ」という言葉が最後に聞こえました。
次に目を覚ましたとき、私は回復室のベッドの上にいました。
そして、医師から「無事に終わりましたよ」という言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜け、ただただほっとしました。

長く感じた手術当日も、支えてくれる声に助けられました。
5. 術後2週間の病理結果。がんが確認されなかったと聞いた日の涙
私の入院期間は5日間で、看護師さんに支えられながら少しずつ日常の動きに戻っていきました。
そして、手術から約2週間後。
診察室で、主治医から手術で切除した組織の病理検査の結果を聞きました。
その言葉を聞いた瞬間、涙がこぼれました。

張りつめていた時間が、結果を聞いた瞬間に涙となってあふれました。
約6か月の抗がん剤治療を頑張ってきたこと、手術方法に迷いながらも主治医と相談して決めたこと、手術前日まで不安だったこと。
そのすべてが一気に胸に込み上げてきました。
結果を聞いた瞬間、温存を選んだことが正しかったと言い切りたいわけではありません。
ただ、あのとき不安を抱えたまま流されず、何度も確認して、自分で納得して選べたことは、私にとって大きな支えになっていました。
画像上がんが見えなくなっていたことに加えて、病理検査でもがんが確認されなかったことは、私にとって「ここまで来られたんだ」と思える本当に大きな区切りになりました。
6. 温存手術を選んだ私を待っていた、次の治療へ(第20話へ)
病理結果を聞いて

「これで一安心」。
そう思えた瞬間でした。
しかし、温存手術を選んだ私の治療は、手術で終わりではありませんでした。
次に待っていたのは、通院の日々や皮膚の変化に向き合う「放射線治療」だったのです。

手術が終わっても、治療はもう少し続いていきました。
第20話では、乳房温存手術後に受けた放射線治療のこと、通院の日々、皮膚の変化、そして治療を終えるまでの気持ちの変化について書いています。
▼第20話はこちらから
7. 【補足】納得して選ぶために。私が手術前にやってよかったこと
これから手術を迎える方へ、私の体験から「やってよかったこと」を簡潔にまとめました。
- 不安なことは、あらかじめメモにして診察で聞く
- 温存手術と全摘手術、それぞれの説明を納得できるまで聞く
- 術後に放射線治療などが必要かどうかを確認しておく
- 乳房再建を希望するかどうかも、必要に応じて考えておく
- どうしても迷いが残る場合は、セカンドオピニオンも選択肢に入れる

頭の中だけで抱えず、紙に書き出すことで質問しやすくなりました。
温存か全摘か、どちらが正解ということではありません。
不安を抱えたままでも、何度も確認し、説明を受け、自分で選んだと思えたことが私の支えになりました。
少しでも納得のいく選択ができるよう、心配なことは抱え込まず、ぜひ主治医と話し合ってみてください。
8. 乳がんの手術方法で迷う方へ|よくある質問(Q&A)
Q1:温存手術と全摘手術、どちらが再発しにくいですか?
A:乳房温存手術は、適応を満たしたうえで術後に放射線治療を組み合わせることで、乳房全切除術と同等の治療成績が期待できると説明されています。ただし、がんの広がりや場所、タイプ、治療経過によって最適な方法は異なります。私の場合も、主治医に自分の状態を確認したうえで温存手術を選びました。不安な場合は、ご自身の病状をもとに主治医に遠慮なく確認してみてください。
Q2:手術方法はいつ決めるのですか?
A:私の場合は、術前抗がん剤治療の効果(画像検査)を確認したあと、手術の数週間前に主治医と相談しながら決めました。治療の流れや検査結果によって決める時期は異なりますので、スケジュールも含めて主治医に確認しておくと安心です。
Q3:不安な気持ちはどのように整理しましたか?
A:不安な気持ちを無理に消そうとせず、主治医や看護師さんにそのまま伝えました。心配なことを紙に書き出し、一つずつ診察で確認していくことで、頭の中のモヤモヤが少しずつ整理されていきました。
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