【夫の病気編:第20話】未来が見えなくなった日、食道がん手術後 説明室で告げられた現実

夫の病気
※この記事は筆者(きゃんばぁば)が自身と家族の体験をもとに記した内容です。
医療的な助言を目的としたものではありません。

眠る夫に安堵しつつも、説明室での話しに募る不安

手術が始まってからおよそ3時間が経った頃、「患者家族の方、手術室の前までお越しください」」と院内放送で呼ばれ、心臓が止まりそうなほど不安になりました。

急いで手術の方へ向かうと、そこには眠っている夫の姿がありました。すやすやと穏やかな表情をしており

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「よく頑張ったね」と声をかけたくなるような気持ちでいっぱいになりました。

病院の廊下の写真

手術後、ひとめだけでも夫と会えて良かったです、

その直後、主治医から

医師
医師

「この後、説明室で手術についてお話をしますので、もうしばらくお待ちください。」

と声をかけられ、再び不安な気持ちに包まれました。

この日は長男も一緒に来てくれていたため、説明室では私と一緒に主治医の話を聞くことになりました。

家族がそばにいてくれることの、心強さを改めて感じる瞬間でもありました。

切除できなかった2センチの「がん」、主治医から告げられた手術の結果と希望

呼び出されて説明室に入ると、すでに主治医が待っておられ説明が始まりました。

大動脈以外の部分については、問題なく切除できました。」と告げられ、まずは少し安心しました。

続けて

医師
医師

気管と大動脈と食道が交差する部分にがんがあり、大動脈と癒着していたためその部分だけは切除できず、約2センチのがんを残さざるお得ませんでした。」

と言われ言葉を失いました。

また、目にみえるリンパの転移は1ヶ所のみで、抗がん剤がよく効いていたため、かなり小さくなっていたとのこと。

反回神経を麻痺させていた「がん」も切除できたため、声のかれも回復の見込みがあると聞き、少し希望が見えました。

そして、体への負担が少ない手術、胸腔鏡と腹腔鏡による手術が無事に終わったと聞き、ほっとしました。

医師と話す患者家族の写真

がんは、手術で取り切れると信じていた分、現実を知った時の落ち込みはとても大きかったです。

根治は難しくても共存を、主治医が語った治療の希望

私は思い切って

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「今後の治療はどうなっていくのでしょうか?」

と主治医に尋ねました。

医師
医師

「正直、はっきりとは申し上げられません。もし治療をしなければ半年ほどかもしれません。ただし、治療を続けていけば、がんを抑えて共存していける可能性はあると思います。」

続けて…

医師
医師

「治すことを目指した放射線治療を行います。これからの治療が効くかどうかが鍵です。」

と説明され、わずかながら希望が見えました。

しかし同時に「他に転移が見つかれば状況は厳しくなります。」との言葉に胸が締め付けられました。

メモを取る女性の写真

メモを取ろうとしましたが、内容が重くて手が動きませんでした。

私は

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「根治が難しいのであれば、せめて共存できるようにしてください。」

とお願いしました。

それに対して、主治医は

医師
医師

抗がん剤の効きが良かったので、化学放射線治療ですすめていきましょう」

と答えてくださり、少し気持ちが楽になりました。

息子の存在に救われて、夫の治療に冷静に向き合えた私の想い

今回、冷静に話を聞くことができたのは、長男が一緒に行ってくれたおかげです。もし一人だったら、感情に押しつぶされてしまっていたかもしれません。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

息子の存在には心から感謝しました。

主治医の話を聞く中で、改めて食道がんの厳しさを実感しました。

食道は、胃や腸のように膜で覆われていないため、周囲の臓器へ転移しやい特性があります。

そのため、たとえステージ3でも長期生存は50%程度と、非常に厳しいがんだということを、以前から調べて知っていました。

夫の場合、がんが大動脈の近くという特に厳しい位置にあってことを思うと、どうしても悔しさが込み上げてきます。

それでも

医師
医師

「明日、ICUでご主人に会えますよ」

と主治医から伝えられたときには、少しだけ安心することができました。

その夜は、息子と母と三人で食卓を囲むことができました。

お惣菜を買って、心配してくれていた母の家に立ち寄り、顔を見せることがができたのも良かったです。

わずかな時間でしたが、三人で静かに励まし合い、少しだけ心が安まるひとときでした。

ダイニングテーブルの写真

緊張の1日を終えて、少しだけ心がほくれたひととき。

本当に、息子がいてくれて本当によかった。

私一人では、とても冷静に受け止めることができなかったと、心の底から感謝した夜でした。


※本記事は夫の食道がんの体験をもとに記しています。同じ病名でも症状や治療法、経過は人によって大きく異なります。診断や治療に関する判断は、必ず主治医や専門医にご相談ください。
※掲載している文章・画像の無断転載・使用はご遠慮ください。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

次は夫の術後入院中のお話しです。

続きの記事はこちらから

🔗関連リンク

👉 Instagramはこちら
乳がんの経験や、夫の闘病を支えながら感じた日々の想いを発信しています。
→ Instagram

note有料シリーズ

👉 第1話 夫が食道がんと告げられて〜ステージ1を信じてしまった私の後悔
👉 第2話 夫の食道がんと向き合って〜「どう生きたいか」を初めて語り合った夜
👉 第3話 治療方針が変わった日〜病院の中で見えた「見えない壁」

※それぞれ単体でも読めますが、順番に読むと「夫婦で病と向き合う物語」としてつながります。

この記事を書いた人
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し完治。妹の膵がんや夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに、
「患者と家族の視点」で記事を書いています。
👉 詳しいプロフィールはこちら
タイトルとURLをコピーしました