夫の手術が始まった朝
8月12日は、夫の「食道がん」の手術の日。

午前8時半前に、私は患者家族控室に入りました。
落ち着かない気持ちのまま、夫に「着いたよ」と連絡をいれてから、夫と会えるまでの時間がやけに長く感じました。
そして9時前、やっと夫と会うことができました。
いつものように冗談を口にして笑うその姿に、ほんの少し肩の力が抜け、
私も笑顔で手術室へと送り出すことができたのです。
それでも、心の奥に不安は消えずに残っていました。
「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせながら…。

私はただ、手術が無事に終わることを願っていました。
家族控え室で待つ、落ち着かない時間
家族控え室には本を持っていきましたが、文字を追っても全く頭に入らず、すぐに閉じてしまいました。
ただ時計の音だけが、やけに大きく響き、1分1秒が途方もなく長く感じられました。

「心ここに在らず」…とは、まさにこのこと。
3時間ほど経った頃、静まり返った控え室に「ご家族の方」と院内放送の声が響きました。
その瞬間、息が止まりそうになりました。

私は震えながら手術室の前で待ちました。
手術中の呼び出しは、たいてい「悪い知らせ」であることが多い,,,そう思ったからです。
案内された部屋には、主治医が待っていました。
主治医の表情を見た瞬間、がんが取りきれなかったのかもしれない…直感でそう感じました。
主治医に呼び出されて、伝えられた現実
手術着のままの主治医が、静かに話し始めました。
「大動脈にがんが絡んでいるため、切除できませんでした。そこだけ残して手術をすることになります」

画像だけでは大動脈と絡んでいるのかわからないと、つまり手術してみないとわからないとのことでした。
一番聞きたくなかった言葉が主治医から伝えられた瞬間、夫の顔が頭に浮かび、涙をこらえようとしても、あふれて止まりませんでした。

「もう治ることないということですか?」
声を震わせながら、私は思わず問い返していました。

このとき私は、目の前が真っ暗になりました。
主治医は少し間をおき、落ち着いた声で、
「残った部分に放射線をかけて根治を目指すつもりです。」と,,,。力強い言葉のはずなのに
直感で「厳しいんだろうな」と感じてしまいました。
「今後の治療のためにも、なるべく早く手術を終わらせて、体力が回復するようにしていきたいと思います。」
そう説明する主治医の声が、遠くで響いているように聞こえました。
手術が終了するまでの時間
再び控室に戻り、手術の終了をひたすら待ちました。
「これからどうなっていくのかな?」何度も心の中で繰り返しました。

「夫になんて伝えればいいんだろう」
悔しさと悲しみで立っているのも精一杯でした。
張り詰めていた風船が「パン」と割れてしまったようで、私の心はしぼんでいくばかりでした。
食道がんの手術は一般的に、8時間から10時間かかると聞いていました。
でも、夫の手術はわずか6時間で終了しました。
「手術が早く終わるのは、良くない結果を意味することが多い」そう耳にしたことがあります。
このあと、控えている主治医からの説明を聞くのがとても怖かったです。

このあと、主治医から伝えられた言葉で、私は未来が見えなくなりました。
続きは次回お伝えしたいと思います。
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