ステージ4のすい臓がんと向き合うことに
私は乳がんを経験し、昨年ようやく完治しました。
でもその矢先に妹がすい臓がんと診断されました。しかも「ステージ4」
膵がんは沈黙の臓器と言われるほど初期症状が出にくく、気づいた時には進行していることが多い病気です。

妹もそのパターンで、診断を受けたときに大きな衝撃を受けました。
膵がんが確定するまでの流れ〜そしてステージ4の診断

妹が「膵がん」と診断されてから「どのステージなのか?」「どんな治療ができるのか?」と不安に思いながら過ごしていました。
それまでの検査(CT ,MRなど)で膵がんであることは分かっていたのですが、ステージが確定していませんでした。

CTやMRI検査をしました
国際がんセンターに転院後、しばらくして妹は「腸閉塞」を治すために開腹手術を受けることになりました。
そこで見つかったのが「腹膜播種」(ふくまくはしゅ)でした。
そしてこの手術の後、妹はステージ4と診断されることになるのです。
- 腹膜(ふくまく)というのは内臓を包む薄い皮のことです
- 播種(はしゅ)とは「種子を蒔く」という意味で、がん細胞が腹膜に種をまいたように散らばってしまった状態です。
膵がんのステージを決めるために行われる検査にはCT ,MRI ,PETなどがあります。
これらの画像検査では「腹膜播種」を100パーセント正確に見つけることは難しいと言われています。
そのために開腹手術をして直接確認しないと分からないケースがあるのです。

妹は開腹手術をしました
治療法がないと告げられた時の衝撃
膵がんと診断されたとき、私たちはまだ「もしかしたら手術で治せるかもしれない」というわずかな希望を持っていました。
でも開腹手術で腹膜播種が見つかり、医師から「手術はできない」「根治治療は難しい」と告げられたとき、まるでどん底に突き落とされたような気持ちになりました。
「これからどうなってしまうの?」

「なぜ妹がこんな病気にならないといけないの?」
頭の中が真っ白になり、言葉にならない不安と悲しみに襲われました。
膵がん確定までに行う検査
すい臓がんの検査を確定させるにはいくつかの検査は必要です。
血液検査(腫瘍マーカー検査) | 血液中の膵酵素や腫瘍マーカーの数値が上昇していないかを確認 |
超音波検査(エコー) | お腹に端末機を当てて画像として異常がないかを確認 |
CT検査 | すい臓の腫瘍の大きさや転移の有無を調べる |
MRI検査 | CTよりも詳しく、腫瘍の位置や血管への浸潤を調べる |
MR胆管膵管撮影検査(MRCP) | 強力な磁石の力で、造影剤を使って体内の断面を撮影する検査 |
超音波内視鏡検査(EUS) | 内視鏡を口から十二指腸まで入れて近くから膵臓を確認する |
病理検査 | EUSやERCPで採取した組織を顕微鏡で精査する |
PET検査 | がん細胞の転移の確認 |
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査 (ERCP) |
専用の内視鏡を口から入れて胆管造影剤を入れX線を使って胆管や膵管を観察する |
これらの検査を行ってから、開腹手術で「膵がんステージ4」と確定診断されました。
この検査を受けているときは、まだ妹も私たち家族もかすかな希望がありました。
膵がん「ステージ4」の現実
すい臓がんの「ステージ4」の5年生存率はわずか数%と言われています。
多くの場合は診断から1年〜1年半が平均的な生存期間です。(あくまで統計です)
妹の場合は「ステージ4」の診断を受けたとき「余命は3ヶ月から1年です」と言われました。
この状態では治療はできないのが現実です。妹は延命のための抗がん剤を選ぶことしかできませんでした。
すでに他の臓器にがんが広がっているので手術での根治は難しい状態のこと。
「もう治療はできない」と言われたとき「後どれくらい生きることができるんだろう?」と考えました。
- 5年生存率:約1〜5%
- 診断後の生存期間:3ヶ月から11ヶ月(個人差が大きい)

これは統計上の数字なので、実際には治療や体調によって大きく異なります。
抗がん剤が効いた場合1年以上生存する人もいますし、緩和ケアを受けながら穏やかに過ごすことを選ぶ人もいます。
症状が出てからステージの診断が出るまで約1ヶ月かかりました。この間私たち家族はなんとか助けることができないか、治療法を調べ続けました。

何か治療法はないか調べ続けました
食べられるようになるはずだったバイパス手術
ステージ4と診断された妹は、がんの影響で食事を摂ることがどんどん難しくなっていきました。
何か食べようとしても、少し食べただけで吐いてしまうことがありました。
その症状を少しでも改善するためにバイパス手術を受けることになりました。
妹の場合がんが十二指腸をふさいでしまい、食べたものがスムーズに腸へ流れていかない状況でした。
- バイパス手術とは
十二指腸ががんでふさがっていたので、胃と空腸(小腸の一部)をつなぐ手術
そこで胃と腸を直接つなぎ新しい通り道を作る手術を受けました。
この手術をすれば、また妹は大好きだった食事を楽しめるようになるはずでした。
術後の辛い日々
バイパス手術の後、嘔吐と痛みを繰り返していました。
胃と腸がしっかりつながるまで時間がかかり、思うように食べられなかったのです。

家族としては「たとえ治療が難しくても、美味しい食事を楽しめる時間を作ってあげたい」と願っていました。
でも妹の体調はなかなか回復せず、食事を口から摂ることはほとんどできませんでした。

妹は点滴で体に栄養を入れていました
妹の悲痛な言葉

手術から少し経ったある日、お見舞いに行ったときのこと。
妹はお腹を押さえなら辛そうに歩いていました。
私の顔を見るなり泣きそうな表情でこう訴えてきたのです。
「お姉ちゃん、私何か悪いことした?」
「なんで私が…?」
私は胸が締め付けられる思いで、なんて言えばいいのかわかりませんでした。

「何も悪いことなんてしてないよ、私たちみんな感謝してるんだから」そう答えるのが精一杯でした。
病院からの帰り道、涙が止まりませんでした。
「どうして妹がこんなに苦しまなければならないの?」
「この世に本当に神様なんているの?」
悲しさと悔しさが込み上げてきました。
ステージ4の膵がんの症状と進行
膵がんは「沈黙の臓器」と言われていますが、ステージ4になるとさまざまな症状が現れます。
消化器症状 |
|
痛み |
|
全身症状 |
|
転移による症状 |
|

赤いマーカーで引いた部分が妹が苦しんだ症状でした。
妹の願いを叶えるために、自宅での療養を支えるのが家族の役割
膵がんステージ4と診断されると「自宅でどう過ごすか?」を考えるようになります。
特に抗がん剤治療を受けながら日常生活を送りたい場合や、病院ではなく最期の時間を自宅で過ごしたいと希望する場合、家族のサポートがとても重要になります。
妹も「早く家に帰りたい」とずっと願っていました。
そこで在宅療養ができる環境を整えることにしました。

家族がしてあげれらることはただ一つ、自宅で過ごせるようにすること
妹の希望を叶えるために、自宅近くの病院とがんセンターが連携し、抗がん剤治療はがんセンターで受け、その他の治療や体調管理は在宅医療で行うことになりました。
こうして妹の在宅療法が始まりました。