「病院にいるのにひとりぼっち」妹の言葉に胸が痛んだ日
2月末に妹とLINEで話した時のこと。
「大きな病院すぎて、一人ひとり親身になってもらえない感じで、個室だし看護師さんも点滴の時しか来てくれないから、悪いことばかり考えてしまう」
そう打ち明けられました。
少しでも最新の治療を受けて元気になってほしい、そう思って紹介した病院でした。

私は、妹がこんな気持ちになっていると知り後悔しました。
コロナ禍が終わったにもかかわらず、面会時間は短いまま。
病院にいる限り側にいてあげたくても、それができない現実がありました。
そんなこともあって自宅で療養したいと考えたのだと思います。
繰り返す輸血、迫る時間〜妹が選んだ治療
3月に入り妹は自宅に戻りました。
でも、すぐに貧血を起こして入院し、輸血を受けることに。

その時もしかしたら…。と不安がよぎるほど体調は悪化していました。
5回の輸血を繰り返した末、「もう猶予がない」と判断され、抗がん剤治療が始まりました。
こうして妹は、抗がん剤治療をがんセンターで受けた後、自宅で療養できるようになったのです。

妹の念願だった在宅での療養が始まりました
在宅療養が必要になるタイミングは?
膵がんの治療は、手術、抗がん剤、放射線治療とありますが、症状が進行すると
「これ以上の積極的な治療は難しい」という場面が出てきます。
- 抗がん剤治療を続けながら、自宅で生活する場合
- 病状が進行し、緩和ケア(痛みや症状のコントロール)が中心になる場合
- 入退院を繰り返す中で、自宅で過ごす時間を増やしたい場合
- 最期の時間を家族と一緒に過ごしたいと希望する場合
病院での治療が難しくなったからといって何もできないわけではありません。

自宅でも妹ができるだけ穏やかに過ごせるように、みんなで工夫をしていました。
抗がん剤治療はがんセンターで:それ以外は在宅の先生に
妹の症状は抗がん剤治療のおかげでしばらく安定していました。
抗がん剤は、週に1度がんセンターの外来化学療法室で受けていましたが…。
「待ち時間が長くて辛い」と辛そうに話していました。
その言葉を聞いて、私も「予約しているのだから、症状の重い患者にはもう少し配慮してほしい」と思いました。
それでも、この頃は抗がん剤が効いたおかげで、がんもおとなしくなっていた時期。
辛いながらも、妹にとって穏やかな時間を過ごせたように思います。

妹は、外来化学療法は待ち時間が長くて辛いと言っていた
自宅で過ごす選択:在宅療養というかたち
在宅療養は、定期的な医師の訪問往診と看護師さんの訪問看護があります。
- 状態に応じて週1〜2回以上
- 緊急時の対応(急な痛み・吐き気・呼吸苦など)
- 在宅での看取りも可能
- 体調管理、点滴、医療処置(腹水・胸水管理、褥瘡ケアなど)
- 痛みや呼吸困難のコントロール
この他に処方薬の配達や医療機器の貸し出しなどがあります。
膵がんの在宅医療では、痛み、消化器系症状、体力低下が出やすいため、これらの症状を和らげるケアを受けていました。

妹は、消化器症状が特にひどく、嘔吐や痛みのケアを受けながら、栄養剤や水分の点滴してもらってました。
妹の抗がん剤治療と脱毛:交わした言葉
3月末に始まったパクリタキセル(抗がん剤)を始めました。
副作用で髪が抜け始めた頃、私たちはウィッグや脱毛の話をしました。

私自身も乳がんで脱毛を経験していたため、妹からいろいろな質問を受けました。
ウィッグの種類や価格の違いについて話しているうちに、久しぶり会話が弾みました。
そんなある日妹から届いたLINE。
「髪が抜けるのは、覚悟していても悲しい。でも悲しいときは泣くね。」
そのLINEを読んだとき、こんなに辛い気持ちで、治療ではなく、緩和ケアを受ける妹が、ただただ可哀想で涙がこぼれました。
そして、妹10月末に腸閉塞になりかけて再び入院しました。
その時、主治医から「抗がん剤治療はもうできない」と告げられました。
さらに、余命は1か月から3ヶ月…。
妹に残された時間が、はっきりと示されてしまいました。

妹は再び入院しました
余命宣告 妹が残された時間を選ぶために
余命宣告は、患者が自身の残された時間を知り、どう生きるかを選択するために必要なことだと言われています。
たとえば、限られた時間の中で何を大切にするのか、やり残したことを整理するのか…。
会いたい人に会ったり、行きたい場所に行ったり、身辺を整理して自分の望む形で、最期の準備をする。余命を知ることでそうした選択ができるようになります。

けれど、私は今でも妹が本当に余命を知りたかったのか疑問に思っています。
病院の方針もあったかもしれませんが、全ての患者が余命を知りたいわけではなく、伝えるタイミングや言葉選びが重要だと感じました。
妹が私に言った言葉…。
「主治医の言葉は冷たく聞こえた」
そう力なく、うつむいた妹を見ていたら涙が止まりませんでした…