私は2013年にトリプルネガティブ乳がんと告知され、術前抗がん剤、手術、放射線治療を受けました。
その後、経過観察を続け、10年後の2024年に主治医から「もう大丈夫でしょう」と言っていただき、ひとつの区切りを迎えました。
今回は、不安や戸惑いでいっぱいだった治療開始前、私を支えてくれた「患者会」について書いています。
検索するほど深くなる孤独。「この怖さを誰かにわかってほしい」
乳がんと告げられてから、私は毎日、不安でいっぱいでした。
治療が始まるまでの時間がとても長く感じられて、未来がまったく見えませんでした。
「どうして私が……」
「自分のせいで、がんになったのかな」
「本当に治療でよくなるのかな」
そんなことばかり考えて、自分を責めていました。
夜は眠れず、何をしていても楽しくない。
家事も手につかず、気づけばパソコンで「乳がん」について検索していました。
でも、どれだけ情報を集めても、心は軽くなりませんでした。
むしろ、知らなかった言葉や怖い情報に触れるたびに、不安はどんどん大きくなっていきました。

情報を集めても、心の不安までは消えませんでした。
そのとき、ふと思ったのです。
私が本当にほしかったのは、病気の情報だけではありませんでした。
「この怖さを、誰かにわかってほしい」
「同じ経験をした人の声を聞きたい」
「ひとりじゃないと思える場所がほしい」
そんな気持ちだったのだと思います。

「情報ではなく、気持ちをわかってくれる誰かを探していたのだと思います」
待合室で見つけたポスター。「重い話ばかりだったらどうしよう…」
そんなとき、病院の待合室の掲示板で、患者会のポスターを見つけました。
「こんな場所があるんだ」
そう思ったものの、すぐに参加しようとは思えませんでした。

行ってみたい気持ちと、怖い気持ちが同時にありました。
どんな人が来ているのだろう。
重い話ばかりだったらどうしよう。
自分の不安を話して、変に思われないかな。
同じタイプや同じステージの人がいなかったら、余計に孤独を感じるかもしれない。
行ってみたい気持ちと、怖い気持ちが半分ずつありました。
それでも、周りに乳がんを経験した人がいなかった私には、誰かと話せる場所が必要でした。

「とりあえず一回だけ行ってみよう」
そう自分に言い聞かせて、患者会に参加してみることにしました。
ドアの前での祈り。「神様、どうか助けてください」
患者会の日、私はとても緊張していました。
ドアの前に立ったとき、心の中では何度もこうつぶやいていました。
「先生、助けてください」
「神様、どうか助けてください」

扉を開ける前の数秒が、とても長く感じられました。
今思うと、それくらい追い詰められていたのだと思います。
患者会は、無理に話さなくてもいい場所でした
ドキドキしながらドアを開けると、迎えてくれたのは温かい笑顔でした。
患者会と聞くと、私はもっと堅い雰囲気を想像していました。
きちんと自己紹介をして、自分の病気のことを詳しく話さなければいけない場所だと思っていました。
でも実際は、思っていたよりもずっとやわらかい雰囲気でした。
お茶を飲みながら話している人もいて、無理に話さなくても大丈夫。
最初は聞いているだけでもよくて、少しずつ会話に入っていける空気がありました。

話さなくても、そこにいるだけで少し安心できる空気がありました
そこには、私と同じように乳がんを経験した人たちがいました。
治療中の人。
治療を終えた人。
経過観察中の人。
状況はそれぞれ違っていても、皆さんの言葉には不思議な安心感がありました。
そして何より、自然に笑っていたことに驚きました。
乳がんになっても、こんなふうに笑える日がくるのかな。

治療を乗り越えたら、私もいつか、こんなふうに話せるようになるのかな。
悲痛な顔をしていたのは、もしかしたら私だけだったかもしれません。
でも、その場にいた皆さんの姿が、私に小さな希望をくれました。
張りつめていた心が、少しだけゆるんだのを覚えています。
はじめて口にできた、治療前の不安
不思議なことに、その場所では、これまで誰にも言えなかった不安を話すことができました。
「本当に治療すればよくなるのかな」
「抗がん剤はどれくらいつらいのかな」
「副作用に耐えられるのかな」
「私は死んでしまうのかな」

怖い気持ちを、初めて声に出せた気がしました。
心の中にたまっていた言葉が、少しずつ外に出ていきました。

言葉にした瞬間、胸の奥にあった不安が少し外へ出ていきました。
患者会の皆さんは、私の話を遮らずに聞いてくれました。
嫌な顔ひとつせず、うなずきながら、最後まで耳を傾けてくれました。
その姿だけで、私は救われた気がしました。
「わかるよ」と受け止めてもらえた瞬間
私が不安で涙を流しながら話すと、皆さんが静かにうなずきながら、こう言ってくれました。
「わかるよ」

「ようやく気持ちが届いたと感じたとき、張りつめていた心が少しゆるみました。」

そのひと言を、私は一番聞きたかったのかもしれません。
家族も友人も、もちろん心配してくれていました。

やさしさに包まれていても、胸の奥の気持ちはうまく届かないことがありました。
でも、がんと告げられたときの怖さや、治療前の先が見えない不安は、同じ立場の人だからこそ伝わる部分がありました。
「大丈夫」
「頑張って」
そう言われるよりも、
「わかるよ」
と受け止めてもらえたことが、あのときの私には何よりありがたかったのです。
また、副作用の不安について話したときには、こんなふうに教えてくれました。
まずは先生の話をよく聞いて、不安なことはメモして質問してみたらいいよ。先生と一緒に治療していく気持ちでいたらいいと思うよ。
それまでの私は、副作用が出ても耐えるしかないと思い込んでいました。
でも、医療者に相談していいのだと知り、少し安心しました。
この言葉は、その後の診察にもつながりました。
私は少しずつ、わからないことを質問していいのだと思えるようになっていきました。
あの日、私が患者会で救われた言葉|あなたは、ひとりじゃない
患者会に参加したことで、私は未来が少し見えたように感じました。
乳がんになっても、治療と向き合いながら日常を取り戻している人がいる。
怖さを抱えながらも、自分の人生を生きている人がいる。
その姿を見られたことが、治療前の私の大きな支えになりました。

心の中に小さな灯りがともり、私は次の一歩を少しだけ信じられるようになりました。
もちろん、患者会に行けばすべての不安が消えるわけではありません。
病気のこと、治療のこと、副作用のこと。
不安はその後も何度も押し寄せてきました。
それでも、あの日の私は、少しだけ思えたのです。
ひとりで抱え込まなくてもいいのかもしれない。
怖いままでも、誰かに話していいのかもしれない。
今、乳がんと告げられて不安でいっぱいの方へ。
怖くて当然です。
泣いてもいいです。
すぐに前向きになれなくても大丈夫です。
でも、どうかひとりで抱え込まないでください。
医療者、家族、友人、患者会、オンラインのつながり。
どこかに、あなたの気持ちを受け止めてくれる場所があるかもしれません。
あの日、患者会で私が救われた言葉を、今度は私から届けたいです。

あなたは、ひとりじゃない。
この安心を胸に、私はいよいよ術前抗がん剤へと向かいました。
▼ 次のお話(第11話)はこちらから↓
患者会で少し心が軽くなったあと、私の治療はいよいよ「術前抗がん剤」へと進んでいきました。治療前に不安だったこと、実際に感じた副作用や脱毛へのリアルな気持ちを、私自身の経験として書いています。
患者会に参加するか迷っている方へ|無理に行かなくても大丈夫です
私にとって患者会は、とてもありがたい場所でした。
でも、すべての人に同じように合うとは限らないとも思います。
会の雰囲気や参加している人との相性もあります。
再発や転移の話を聞くことで、かえって不安が強くなる人もいるかもしれません。
もし参加してみて、
「今の自分には少ししんどい」
と感じたら、無理に続けなくても大丈夫です。
参加しない選択も、決して間違いではありません。
乳がんの患者会や交流会は、地域や病院、支援団体などで開催されていることがあります。

安心できる場所は、人によって違っていていいのだと思います。
私が知ったように、病院の待合室などの掲示板に案内が出ていることもあります。
通院先で相談すると、近くの患者会や相談窓口を教えてもらえる場合もあります。
また、信頼できる支援団体の公式サイトなどを確認してみるのもよいと思います。
対面の患者会が不安な場合は、オンラインの交流会やSNSなど、少し距離を保てる場所から始めるのもひとつの方法です。
大切なのは、自分の心が少しでも安心できる場所を選ぶことです。
そして、経験談は参考になりますが、医療的な判断の代わりにはなりません。
治療方針や副作用については、必ず主治医や医療者に相談してくださいね。
※患者会の開催状況や内容は変わることがあります。参加を考える場合は、必ず最新の公式情報を確認してください。
あわせて読んでほしい記事
パクリタキセルの副作用について、しびれ・脱毛・味覚障害などをもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしていただけたらと思います。
▶ 【第13話】パクリタキセルの副作用はいつから?しびれ・脱毛の体験談と対策
※掲載している文章・画像の無断転載・使用はご遠慮ください。



