【夫の病気:第28話】「体に自分を合わせて生きるしかないな」〜術後に苦しむ夫が教えてくれた、生きるということ

夫の病気
本記事は、筆者(妻)と夫の体験をもとに記しています。
治療や副作用の出方には個人差があります。
体調や治療方針については、必ず主治医・医療機関にご相談ください。

「もう、腸ろうはやめたい…」。

夫のその言葉から、私たちの新しい生活が始まりました。

体調の波、痛み、不安…。

それでも前を向こうとする日々を、漫画に綴りました。


術後の痛みは、想像以上に長く続いた

主治医と患者夫婦がはなる場面の漫画

どうにか少しでも楽になってほしくて主治医に相談しました。

主治医にお願いして痛み止めを処方してもらいましたが、期待していたほどの効果はなく、夫の表情から痛みが消えることはありませんでした。

眠れない夜と、咳止めがもたらした小さな救い

寝室で眠る夫婦のイラスト

放射線科の先生が新しい薬を処方してくださいました。

痛みと咳で眠れない夜が続きましたが、先生が出してくださった咳止めが効き、ようやく眠れるように。

たったそれだけの変化でも、私たちには大きな救いでした。

腸ろうと向き合う日々:栄養は「わかっている」けれど…

腸ろうに入れた栄養剤を体に流しいれる夫のイラスト

「きっと体が慣れてくる」と信じてできる範囲で続けました。

栄養のためだと頭ではわかっていても、腸ろうから入れるたびに気分が悪くなり、下痢を繰り返す日々。

何なら食べやすいのか悩みながら、少しでも負担のない食事を探りました。

食べることは、生きる力!身体の変化に、生活を合わせていく

リビングで会話する夫婦のイラスト

少しずつ「今できること」を増やしながら、私たちは前に進みました。

手術で食道がなくなり、体の構造が大きく変わりました。

そんな中で夫がぽつりとこぼしたのは、「体に自分を合わせて生きるしかないな」という言葉。

そこに私は、前を向いて生きる覚悟を感じました。

「伝える」ために、記録するーー私にできる支え方

パソコンで書類を作る妻のイラスト

自宅での様子・困りごとを医療者に正確に伝えるための記録。

痛みや不調が続く夫の状態をどう伝えればいいのか。

私は、日々の様子を一つずつノートにまとめ、診察のたびに主治医へ共有しました。

今の私にできる、いちばん確かな支え方でした。

「生きるということ」ー術後の夫から受け取った7つの気づき

夫の「体に自分を合わせて生きるしかないな」という一言は、弱さの宣言ではなく、生き方の再設計でした。

術後の痛みも、腸ろうのつらさも、眠れない夜も、全部まとめて「それでも生きる」を選び直すプロセス。

そこから私たちが受け取ったのは、次の7つです。

  1. 痛みは敵ではなく合図。
    痛みが出たら「無理をやめる」「体勢を変える」「医療者に伝える」。
    戦うより、扱い方を学ぶ
  2. 正解より、いまの最善。
    「完璧な食事」より「入るものを入れる」。
    栄養は理念ではなく現実。その日動ける一歩が満点
  3. できないを前提に組む。
    術後の体に合わせる。
    時間割、食事、外出、睡眠…新しい基準で再配置することで、できるが増える。
  4. 小さな勝ちを数える。
    「昨夜は2時間眠れた」「今日は下痢が1回減った」
    回復の尺度を自分たちで作ると、折れにくい。
  5. 言葉で痛みを運ぶ。
    主観は伝わらない。だから記録し、具体語で渡す。
    「つらい」を診療に役立つ情報へ翻訳するのが家族の力。
  6. 希望と現実は両立できる。
    「治したい」も「つらい」も本物。
    ポジティブであろうとしすぎないことで、続けられる。
  7. 関係も再設計する。
    「してあげる」だけでは続かない。
    助け方の線引き、休む勇気、頼る先を増やす。ケアはチーム戦
きゃんばぁば
きゃんばぁば

「病気に合わせて生きる」ことは、負けではなく、自分の生き方を自分で選び直すことでした。

今日からできる、3つのミニ実践

  • 記録は事実+機能。
    (例)「咳で23:00〜1:00起床/横向き+咳止めで1:30就寝」。
    介入と結果を1セットで書く。
  • 食の当座案。
    腸ろう・経口・経腸のどれでもいいから、負担が少ない“入りやすい形”を優先(温度・粘度・量の微調整)。[当座案とは:いったんの方向性を示すための仮案
  • 勝ちの宣言。
    その日いちばん助かった変化をひとつ声に出す。
    家族の気持ちが折れない工夫は治療の一部。
きゃんばぁば
きゃんばぁば

「生きるということ」は、元に戻すことではなく、更新しつづけること。夫の一言は、私たちにその手順を教えてくれました。

さいごに

生きるということは、元に戻ることではなく「合わせて更新する」こと。痛みや不安が消えなくても、前を向く気持ちは失わない。そんな夫の姿に、私自身が支えられています。

※本記事は筆者と家族の体験に基づく記録です。治療経過・副作用の出方には個人差があります。医療判断は必ず主治医・専門医の指導に従ってください。
※掲載している文章・画像の無断転載・使用はご遠慮ください。

この記事を書いた人
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し根治。妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに「患者と家族、両方の視点」で発信しています。
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