消化器外科を受診した日。手術に向けたスケジュールも決まり、翌週には入院して、抗がん剤治療を受ける予定になっていました。

手術すれば治ると信じている夫。だけど私は不安で胸がいっぱいだった。
でも、夫は食道がんの手術がどれほど大変なものかを知りませんでした。外科の診察室では、手術についての詳しい説明はなかったのです。

私たち二人、ちゃんと理解しないまま進んでる気がする…。
入院前の週末、夫とゆっくり話す時間がありました。
私はどうしても、どのような手術を受けるのか、そのあと生活の質がどう変わるかを、夫に伝えておきたかったのです。

食道がんの手術が、どれほど大きなものかを知らなかった夫に、まずはその現実を伝えた上で、手術を受けるかどうかを決めてほしかったのです。
食道がんの手術は、がんのある部分だけじゃなくて、食道全体を取るんだよ。
そして、そのあとに胃や腸を使って新しく「食べ物の通り道」をつくる再建手術が行われるんだって。
そうなると、食事の仕方や食べられる量、飲み込み方も大きく変わってしまうの。
体力が落ちたり、食欲がなくなったり、体重が減ったりすることもあるみたい。
と夫に伝えました。

本当は怖がらせたくなかった…。ただどんな手術を受けるのか知っておいて欲しかっただけ…。
それまで「手術すれば大丈夫」と楽観的に考えていた夫に恐怖心を与えてしまいました。
私は、もう何が正解なのかわからなくなり、心が揺れていました。

手術の他に治療法がないのか、二人で何度も話し合いました。
そいて翌日「夫は生活の質を落としてまで、生きていたくない」と考えを変え、今回の入院は断ることにしたのです。
その直後、病院から連絡があり「明日外科の診察を受けてください」と伝えられました。

外科の先生は、再び時間をつくり、夫の病状や治療法について詳しく説明してくださいました。
私は、そのお話しに納得して手術をお願いしたいと思いましたが、夫の意思は変わらず、外科的手術は望まないと告げました。

医療の専門家でもない私が、夫の決断に大きな影響を与えてしまったことを後悔しました。
そんな思いが心を締めつけ、食事も喉を通らなくなりました。

次のお話は化学放射線治療を受けるため診察と、それに向き合う私自身の心の葛藤についてです。
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