【夫の病気:第27話】「説明」と「納得」は違う—食道がんで学んだインフォームド・コンセントと共に決める医療

夫の病気
※本記事は筆者と家族の体験記です。医療的助言を目的とするものではありません。治療の判断は必ず主治医とご相談ください。

がん治療でよく耳にする「インフォームド・コンセント(Informed Consent)。

最近注目されている「シェアード・デシジョン・メイキングShared Decision Making/以下SDM:共に決める医療)。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

夫の治療を通して感じたのは、「説明を受ける」ことと、「納得して選ぶ」ことは、まったく別だということでした。

はじめに:夫の治療で感じた「すれ違い」

夫が食道がんの治療を受けていたとき、私は何度も「同じ病院なのに、なぜ意見がこんなに違うのだろう」と感じました。

最初が消化器内科、転移が見つかり外科へ。

そこで「手術を前提とした治療」を強く勧められました。

しかし、夫は化学放射線治療を希望。

再び内科に戻りましたが、詳しい説明がないまま入院に向けた検査だけが淡々と進んでいきました。

きゃんばぁば
きゃんばぁば

「どの科が私たちの治療を見てくれるのだろう」不安を抱えたまま、時間だけが過ぎていきました。

「説明を受けるだけ」の立場になってしまった感覚…それが最初に感じたすれ違いでした。

インフォームド・コンセントとは

医師が患者に治療内容を十分に説明し、患者が理解・納得したうえで同意することを指します。

説明で特に大切なのは次の3点です。

  1. 治療の目的と方法(やる・やらない、期間・手順)
  2. 想定される副作用・合併症・起こりうる不利益
  3. 他の選択肢(経過観察・緩和中心など)とその利点・欠点

これらを理解できてこそ、はじめて「自分はどうしたいか」を考える土台が整います。

説明を受けても心が追いつかないとき

きゃんばぁば
きゃんばぁば

告知直後は頭が真っ白で、冷静に選べない瞬間が何度もありました。
そんな中で「どの治療を選びますか?」と問われるのは、本当に苦しかったです。

インフォームド・コンセント医師と患者の話し合い(イメージ)

正しく理解し、納得して選ぶために…主治医との話し合いは要です。

皆さんはどうでしょうか。もし自分や家族が同じ状況なら、落ち着いて選べるでしょうか?
多くの人にとって、ここに“大きな壁”があります。

SDM(共に決める医療)とは?

SDMは、医師が一方的に決めるのではなく、患者と医療者が対話を重ねながら、一緒に最適な治療を選ぶという考え方です。

従来の「説明して同意を得る」から一歩進み、価値観の共有を重視します。

治療についてともに決め医師と患者のイラスト

あなたは医師と、どんなふうに話したいですか?

共に決める3ステップ
🔹❶医師が選択肢と利点・欠点を提示する。
🔹❷患者が自分の希望(仕事・生活・価値観)を伝える。
🔹❸双方が納得できる方針を一緒に選ぶ。

こうして意識は「医師が決めた治療」から「自分で選んだ治療」へと変わります。

私が感じた共に決めるということ

きゃんばぁば
きゃんばぁば

私の乳がん治療では、主治医が選択肢を丁寧に説明し、必ず「あなたはどう思いますか?」と聞いてくださいました。
一方的ではなく、納得して進められる治療だったから、不安の中でも前を向けました。

実務に役立つ:診察前チェックリスト

  • 疑問点は箇条書きで印刷(診察時に渡せる形)
  • 希望の優先順位を書いておく(寿命/生活の質/仕事など)
  • 同席者を決める(家族・友人)
  • 録音の可否を受付で確認(メモ代わりに)
  • 説明後は自分の言葉で要約して医師に確認(聞き間違い防止)

これからの医療に必要なのは「説明」より「対話」

病気や治療が多様化した今、正確な情報だけでは安心できません。

大切なのは説明の量ではなく、どれだけ気持ちを共有できたか

医師が治療について患者に話すシーンのイラスト

「説明」と「納得」は違います。そこをつなぐのが対話

同じ想いを、言葉にして伝え合う

きゃんばぁば
きゃんばぁば

医師も患者も家族も、目指すのは同じ—「命をつなぎたい」立場が違っても、その想いを言葉にして伝え合うことが、第一歩だと思います。

さいごに

もし治療の選択で迷ったら、どうか一人で抱え込まず、「先生と一緒に考えてみよう」と口に出してみてください。きっと状況は少し変わります。

※本記事は体験記です。検査・治療の適応や効果・副作用は個人差があります。医療判断は主治医とご相談ください。

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この記事を書いた人
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し根治。妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに「患者と家族、両方の視点」で発信しています。
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