【第31話:夫の病気】食道ガン放射線治療の検査結果前夜、妻が抱えた「静かな恐怖」と夫婦で迎えた朝

夫の病気

明日、結果を聞きに行く前夜の空気

治療に向き合い続けた夫と、そのそばで支えてきた私。

放射線治療後の評価となる検査結果を聞きに行く前夜、私たちは不安と緊張の中で長い夜を過ごしていました。

その夜の空気は、これまで経験したどの夜とも違っていました。

リビングで考え事をしている夫婦のイラスト

その夜の空気はこれまで経験したどの夜とも違っていました。

「きっと良い結果が聞けるはずだ。」

そう信じ込もうとする微かな希望と、足元から忍び寄る「もしもの現実が目の前に現れるかもしれない」という最悪の可能性の影。

その二つの感情が、部屋全体を重く覆っていました。

普段と違う、夫の「静かな」変化

夫はいつもの夫ではありませんでした。

言葉数が少なくなり、テレビをみていても頭に入っていないような、どこか「ここにいない」ような様子でした。

テレビを上の空で見る夫のイラスト

彼は今、何を考えているのだろう。自分の体のこと?それとも残されて時間のこと?あまり話しかけないほうがいいのだろうか?

私が尋ねたわけではありませんが、彼の内側が不安でいっぱいだと、隣にいる私には痛いほど伝わってきました。

彼は今、何を考えているのだろう。「自分の体のこと?それとも残された時間のこと?」

「私に余計な心配をかけまいとして、明るく振る舞おうとしているのだろうか。その推測こそが、私を余計に不安にさせている。」

普段と違う彼の姿を見つめながら、私は呼吸を意識的に深く繰り返すことしかできませんでした。

妻として私が選んだ「静かな接し方」

こんなとき、妻としてどう振る舞うべきか、正解がわかりませんでした。

「大丈夫だよ」と安易に励ます言葉は、帰って彼の不安を増幅させかねないと思いました。

結局、私が選んだのは「いつも通りを維持すること」、そして言葉ではなく、存在で寄り添うことでした。

キッチンで食事を楽しむ夫婦のイラスト

夕飯の話題は、明日のことには触れず、ごく普通のたあいない話に終始しました。

夫が黙っているときは、私もあえて話しかけず、ただ隣に座り続けることを意識しました。

横になったとき、そっと夫の手を握り「ずっとそばにいるよ」という無言のメッセージを送ることだけを心がけました。

「どうか治療の効果がありますように」祈るような気持ちと、明日がこわい気持ちが入り混じり、なかなか眠りにつくことができませんでした。

前夜の緊張を乗り越えて迎えた朝

翌日の説明を思うたび、夫がこれまで頑張ってきた姿が浮かびました。

手術、化学放射線治療、副作用との戦い….その全てが報われて欲しいと願うばかりでした。

玄関で出かける準備をする夫婦のイラスト

不安と緊張の中で夜が明け、私たちは支度を始めました。

その夜交わした「静かな会話」は、特別な言葉はなかったかも入れません。

けれど、私たち夫婦が明日どんな結果が出ても一緒に乗り越える」という無言の決意を固めた、大切な時間になったのだと思いました。

▶️次の記事:【第32話:夫の病気】治療の道が途切れた日。主治医から「緩和ケア」を告げられた私たちの現実へと続きます。


本記事は、夫の治療経過の中で「一患者家族として感じた体験」をもとに記しています。症状や対処法、治療の選択については必ず主治医や担当医療スタッフへご相談ください。特定の治療を勧める意図はありません。
患者さんごとに状況は異なります。

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note(有料シリーズ)

👉 第1話 夫が食道がんと告げられて〜ステージ1を信じてしまった私の後悔
👉 第2話 夫の食道がんと向き合って〜「どう生きたいか」を語り合った夜
👉 第3話 夫の治療方針が変わった日〜病院の中で見えた「見えない壁」
👉 第4話  治療中に「妻として聞けなかったこと」とあとで気づいた視点

この記事を書いた人
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し根治。妹の膵がん、夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに「患者と家族、両方の視点」で発信しています。
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