術後に残ったがんへの対応
食道がんの主治医の診察を終えたあと、

私たちは放射線治療を受けるため、放射線科の先生との面談に向かいました。
手術では、大動脈に張り付いたがんを取りきることができず、
その部分が残っていることは手術直後から分かっていました。
さらに病理の結果、切除したリンパ節にもがんが見つかり、
周囲のリンパ節と大動脈に残ったがんに放射線をあてることになったのです。
放射線の先生からの説明

挨拶を交わしたあと、先生は丁寧に説明してくださいました。
「外科から相談がありました。
手術で取りきれなかった部分…大動脈に張り付いたがんや、食道のあった場所の近くにあるリンパ節。そこに放射線を当てていきます。」
そう言って、術前に撮ったPET-CT検査の画像を見せてくださいました。
PET-CTでの確認
PET-CT検査は、体の中に「がんがどこにあるのか」を調べるための検査です。
ブドウ糖をたくさん使うがんの性質を利用して、PETで全身を映し出し、CTで体の形をはっきり写すことで、転移や広がりを一度に確認できます。
※一回の検査で全身をチェックできるので、「再発していないか」「どこまで広がっているか」を知るためによく行われます。
- 鎖骨の下にある小さながん
- 大動脈に残ったがん
- 光っているリンパ節
「隠れているかもしれないがんも含めて、しっかり叩いていきたい。」
その言葉に、心が少し救われた気がしました。
照射方針と配慮点
食道を切除したあと、胃を食道がわりにつなぎ合わせている部分があります。
ここは通過障害を起こす可能性がありますが、先生はこう言ってくださいました。
「風船のように膨らませて広げる治療があるから心配しなくて大丈夫です。」
さらに続けて、
「胃は放射線に弱い臓器なので、この部分は繊細に扱います。
一方で残ったがんやリンパ節、疑わしい部分にはしっかり放射線を当てていきます。」

先生の治療に対する強い気持ちが嬉しかったです。
放射線を当てる強さを調整しながら、守るべき場所は守り、狙うべきところは確実に照射する…
そのバランスの大切さを、先生は落ち着いた口調で、時折こちらに目を向けながら丁寧に説明してくださいました。

説明を聞いているうちに、不思議と心が穏やかになっていきました。
照射範囲と治療計画(全28回)
照射範囲は乳首の下から、上は鎖骨の近くまで。
再発しやすい部分をしっかりカバーする形で、合計28回の治療を行うということでした。
平日はほぼ毎日通院する必要があり、治療期間はおよそ1か月半にわたります。
治療の大変さを思うと不安もありましたが、

「治すためにできることがある」
その事実が、私たち夫婦にとって大きな希望になりました。
放射線治療の主な方式(IMRT/IGRT/VMAT)
先生のお話を聞きながら、改めて放射線治療の進歩を実感しました。
現在の放射線治療では、さまざまな最新機器が導入されています。
- IMRT(強度変調放射線)
照射の角度や強さを細かく調整し、がんをピンポイントで狙うことができます。 - IGRT(画像誘導放射線)
治療のたびCTで体内の位置を確認しながら行うため、ズレなく正確に照射できます。 - VMAT(ボリューム変調回転照射)
装置が回転しながら短時間で照射でき、治療時間が短縮されるため、患者の負担が少なくなります。

夫が受ける治療です。
夫は、この中のIMRTで治療を受けることになりました。
この方法なら、照射の角度や強さを精密に調節できるため、残っているがんをしっかり狙いながら、肺や心臓など周囲の臓器を守ることができます。

11年前、私自身が乳がんの放射線治療を受けたときとは比べものにならないほど、機器も技術も進化しているのだと感じました。
私の乳がん放射線治療、実際どうだった?体験記をまとめています。👇
私の質問と先生の答え
先生の説明をひととおり聞いたあと、私は思い切って尋ねました。

「それは再発予防になるのですか?」
先生は迷わず答えてくださいました。
「もちろんです。小さくしてがんをやっつける。
そして、隠れているかもしれないがんも叩く、再発予防になります。」
その力強い言葉に、不安が少し和らぎました。

私はもう一歩踏み込んで聞きました。

「大動脈に残ったがんは、消える可能性がありますか?」
先生はまっすぐに私を見て、はっきり答えてくださいました。
「あります。それがメインの治療です。
血管は放射線に強いので大丈夫。
心配なのは胃ですが、そこは慎重に進めていきます。」
先生の言葉に、ようやく前を向ける気がしました。
想定される副作用と対処
放射線の副作用についても先生は、丁寧に説明してくださいました。
- 胃に当たると:痛みや違和感が出ることがある
- 全身症状:倦怠感や吐き気が出る可能性がある
- 胃の変化:放射線で胃が固くなり、飲み込みにくくなる場合がある
(その場合は胃カメラで広げる治療が必要) - 肺への影響:半年以内に放射線性肺炎が出ることがあるので注意が必要

副作用の説明を聞いて、正直不安は残りました。
けれど同時に先生は「起こりうることには必ず対処方法がある」と伝えてくださいました。
その一言で、少し安心できました。
ここから1ヶ月半の〜それでも希望がある
およそ1ヶ月半続く、術後の「化学放射線治療」が始まります。
「まだ、治療をしてもらえる」そのこと自体が、
私たちにとって大きな支えであり希望でした。
さいごに
ここに書いたのは、私たち夫婦が経験したこと、そして私の受け止め方です。
治療の内容や経緯は人によって異なります。
※これはあくまでも私個人の体験です。
治療方針については、必ず主治医と相談してください。
無断転載・引用はご遠慮ください。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

次回は、抗がん剤治療を終えて退院し、放射線治療に通う夫の姿についてお話ししたいと思います。
きゃんばぁば|乳がんサバイバー/家族の闘病サポーター
乳がんを経験し完治。妹の膵がんや夫の食道がんを家族として支えた実体験をもとに、
「患者と家族の視点」で記事を書いています。
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