思いがけず始まった夫の異変、最初の記録
夫はお酒が大好きで、食べることも楽しみのひとつ。
元気で明るく、よく食べよく飲むそんな人です。

最初の異変に気づいたのは、家族で焼き肉を食べに行った日のことです。
楽しく食事していたはずが、突然夫が嘔吐したのです。
そのときは「少し体調が悪かったのかな」としか思わず、深くは気にしていませんでした。
でも、それが始まりでした。
その後も、食事のたびに嘔吐を繰り返すようになっていきました。
だんだん食べる量も減っていき、さすがに「これはおかしい」と感じました。
夫が通っている消化器内科で、内視鏡検査を受けるように勧めました。

夫は内視鏡検査を受けました
そして数日後、検査を終えて帰ってきた夫はポツリと呟きました。
「がんみたいや…」
麻酔の影響もあってか、先生の話の内容はあまり覚えていない様子でした。
私自身も、状況がつかめず、数日後夫と一緒に病院へ行き、内視鏡の結果を聞くことになりました。
診察室での先生の説明を聞いた日

内視鏡の結果を聞くため、夫と二人で病院へ行きました。
このとき、何故か私は「きっと、がんじゃない」と根拠のない自信のような気持ちを抱いていたんです。
でも、その思いは診察室で一瞬にして崩れていきました。
先生が見せてくれた内視鏡の写真をみた瞬間、現実を突きつけられました。
静かに、でもはっきり「この部分ががんです」と伝えられました。

がんですと言われました
私は思わず「早期ですか?」と尋ねました。
「進行がんではないと思いますが、早期とも言い切れません。もっと詳しい検査をします」と説明してくださいました。
生検の結果が出るのは2週間後。
先生は、最後にこう言ってくださいました。
「大阪では国際がんセンターが一番高度な治療を受けられるので、結果がでたらそちらへ紹介状を書きますね」
実は、夫は以前から消化器内科に通ってたのに、昨年、内視鏡検査を受けていなかったのです。
私もそのことを知らずに過ごしてしまっていて「どうして確認しなかったんだろう」
と自分を責めてしまいました。
夫はというと…
「がんになったから治療するしかないな」と言って
それ以上、がんについて語ることはありませんでした。
帰宅後から始まった食道がんについての情報収集

検査や症状から考えてもどうやら「食道がん」である可能性は高そうだと感じました。
帰宅してから夫の病気について調べ始めました。
「食道がんってどんながんなの?」
「生検で何がわかるの?」
「食道がんのステージは?」
不安と戸惑いの中で、少しでも知っておきたいという思いで、情報を集め始めました。
❶食道がんとは

食べ物の通りにできるがんです。
「食道がん」とは食べ物や飲み物が通る食道にできるがんのことです。
食道は、のどと胃をつないでいる大切な気管。
そこに異常な細胞(がん細胞)ができることで、飲み込みにくさや、むせ、嘔吐などの症状が出てきます。
日本では、喫煙や飲酒が主な原因とされている「扁平上皮がん」(へんぺいじょうひがん)が多くみられるようです。
訪米などで多いのは「腺がん」で胃酸の逆流などが関係しています。
初期の段階では、目立った症状が出ないことも多く、発見された時には進行していることもあります。
だから、早めの検査や受診がとても大切です。
❷食道がんの生検で何がわかるの?

「がんかどうか」を確かめる大切な検査です。
内視鏡検査のときに、先生が「生検をしました」ということがあります。
これは気になる部分の粘膜を採って、顕微鏡で調べる検査のことです。
- がんかどうか(良性か悪性か)
- がんの種類(扁平上皮がん、腺がん)
- がんの広がり方や特徴(治療法を考える材料になります)
生検の結果が出るまでは1週間〜2週間ほどかかります。
この間は、どうしても落ち着かなくて、不安でいっぱいになります。
でも、この時間が正確に判断して、最善の治療につなげるために必要な時間なんだ、と自分に言い聞かせながら過ごしています。
❸食道がんのステージは?

0からⅣまでの5段階です。
ステージ0 | 粘膜のごく表面にとどまる、ごく初期の状態 |
ステージⅠ〜Ⅱ | がんが少し深くなってきた段階。リンパ節転移がある場合も |
ステージⅢ | 食道の外側に近づき、リンパ節への広がりが目立つ段階 |
ステージⅣ | 他の臓器(肺・肝臓など)に転移がある状態 |
ステージは、がんの深さやリンパ節や他の臓器への転移の有無で判断されます。
さいごに:家族として感じたこと

「ステージ」がどうであれ、できることを前向きに進むしかない。
夫の結果を待つ中で、そんな気持ちに少しずつ切り替えていきました。
今は、焦らず必要な検査をしっかり受けて、今できる最善の判断につなげたい。
そんな思いで、私たちはこの期間を過ごしてきました。